2026年6月24日付の官報(本紙第1733号)に、防衛省告示が9本まとめて掲載された。内容は「海上における射撃訓練・射爆撃訓練の実施」に関するもので、7月1日から8月31日にかけて、日本各地の沿岸海域に訓練区域が設定されている。
読み飛ばされがちな告示だが、よく読むと興味深いことがわかる。夏の海は、観光や漁業だけでなく、自衛隊の訓練スケジュールとも「共存」しているのだ。
どの海域が対象になっているか
今回の告示で設定された訓練区域は、北海道から九州まで広範囲にわたる。
- 日高沖海面(北海道):空対空射撃訓練。高度9,144メートル(約3万フィート)以下の空域を含む。実施時間は08:00〜17:00。
- 日高沖南方海面(北海道):同じく空対空射撃訓練。こちらは高度無制限の空域設定。
- 三沢沖海面(青森県):空対空射撃訓練および水上標的への射爆撃訓練。高度10,668メートル以下。
- 佐渡沖海面(新潟県):空対空射撃訓練。高度10,668メートル以下。実施時間は07:00〜19:00と幅広い。
- 若狭湾北方海面(福井県沖):空対空射撃訓練・射爆撃試験の複合区域。高度24,384メートルという突出した上限が設定されており、この海域だけ別格の扱いになっている。
- 百里沖海面(茨城県):空対空射撃訓練および射爆撃訓練。
- 三沢沖海面(青森県):水上標的への射爆撃に特化した区域も別途設定。
- 響灘沖海面(福岡県・山口県沖):空対空射撃訓練。高度10,668メートル以下。
- 五島列島南方(長崎県沖):艦艇(自衛艦9隻)による射撃訓練。7月2日・3日・5日の3日間限定。
告示ごとに区域の座標が経緯度で細かく示されており、それぞれの海面を多角形で囲む形で区域が確定されている。
「訓練をするから近づくな」ではなく「確認しながらやる」
告示の「その他」欄に、すべての訓練に共通する記述がある。
「射撃訓練は、前記区域に航空機が存在しないこと、また、射撃海面に船舶等が存在しないことを確認しながら実施する」
つまり、区域内に一般の船舶や航空機がいることを確認した場合は訓練を中断する前提になっている。立入禁止区域を完全封鎖するわけではなく、確認行為を挟みながら実施する運用だ。漁船や観光船が絶対に入れないわけではないが、区域の経緯度は公開されているため、関係者(漁業組合や航空会社など)は事前に把握できる。
若狭湾の「高度24,384メートル」は何を意味するか
9つの訓練区域のなかで、若狭湾北方海面だけ突出した数字がある。高度24,384メートル——これは約8万フィートに相当し、通常の旅客機の巡航高度(約1万メートル前後)の2倍以上に達する。
この告示は「空対空射撃訓練及び試験並びに水上標的に対する射爆撃訓練及び試験」と明記されており、「試験」という言葉が加わっている点も他と異なる。通常の訓練ではなく、装備品や兵器のテストを兼ねた区域として設定されていると読める。
毎年夏に繰り返される「予約」
この種の告示は毎年夏に定例的に官報へ掲載される。防衛省が「7〜8月の訓練枠」をあらかじめ公示し、関係機関が周知する仕組みになっている。
海上保安庁の航行警報や漁業無線でも周知されるが、大元の法的根拠は官報の告示だ。夏の海水浴シーズン・漁期と重なる時期に、静かにスケジュールが組み込まれている。
観光客が砂浜から眺める夏の海の、その先の空で何かが行われている可能性がある——そう考えると、見慣れた夏の風景が少し違って見えてくる。
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【コラム】官報告示と「航行警報」の違い
自衛隊の訓練区域は、防衛省が官報に告示を掲載することで法的に公示される。一方、船舶の航行安全に直結する情報は、海上保安庁が「航行警報」として別途発信する。航行警報はFAX・無線・ウェブで漁協や船会社に届く実務的な通知で、官報とは別のルートで周知される。官報の告示はあくまで「根拠の公示」、航行警報は「現場への実務連絡」という役割分担になっている。また、訓練区域の座標に使われる「世界測地系」は、GPSが採用している座標基準と同一のものだ。
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