※本記事は官報(2026年6月29日号外第143号)および文化庁の公開情報に基づいています。
2026年6月29日、官報に一件の告示が掲載された。文部科学省告示第96号。難解な法律用語で書かれたその中身は、意外にも歴史ロマンに満ちていた。「マリー・アントワネット旧蔵の真珠とダイヤモンドの3連ネックレス」が、日本の法律によって差し押さえも仮処分もできない状態に指定された——という内容だ。
横浜美術館に来る「マリー・アントワネットの私物」
今年8月1日から11月23日まで、横浜美術館でマリー・アントワネットに関わる美術品・衣装品が公開される予定だ。官報に記載された指定品目は4点。
- マリー・アントワネットの食器セット
- マリー・アントワネット旧蔵(推定)のストマッカーとスリーブ
- マリー・アントワネット旧蔵(推定)のペチコートの断片
- マリー・アントワネット旧蔵の真珠とダイヤモンドの3連ネックレス
「推定」とつく品も含まれているが、3連ネックレスは推定なし。つまり確実にマリー・アントワネットが所有したとされるアクセサリーが、今夏、日本に来る。
なぜ差し押さえ禁止になるのか
ここで登場するのが「海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律」(平成23年法律第15号)だ。
この法律の目的はシンプルだ。海外から借りてきた美術品を、日本にいる第三者が差し押さえられないようにすること。文部科学大臣が対象品を指定することで、強制執行・仮差押え・仮処分のいずれもできなくなる。
なぜそんな法律が必要なのか。背景には20世紀末に多発した「美術品差し押さえ事件」がある。ロシアや東欧諸国、中国、台湾などの国営美術館が海外の展覧会に作品を貸し出したところ、「その所有権は自分にある」と主張する第三者が差し押さえを申し立てる事例が続いた。これを恐れた美術館が海外への貸し出しを渋るようになり、日本でも名品を見られなくなるという問題が生じた。
特に有名なのは台湾の故宮博物院のケースで、中国による所有権主張を懸念して日本への貸し出しに難色を示した。この問題を解消するために国会議員が動き、2011年に法律が整備された。
申請するのは「借りる側」
この制度で面白いのは、差し押さえ禁止の申請をするのが作品を借りる日本側だという点だ。今回の告示では、株式会社読売新聞東京本社(横浜美術館事業局)が申請者として名前を連ねている。
文部科学大臣が指定を行う際には外務大臣への協議も必要で、決して簡単な手続きではない。文化庁のホームページには指定品目のリストが公開され、最高裁判所にも情報が共有される。万が一、差し押さえの申し立てがあっても、裁判所がその品目を確認できる体制が整う。
指定の有効期間は「2026年7月10日から同年12月31日まで」。会期が終われば保護も終わる。あくまで日本での展示期間中に限った措置だ。
知られざる「美術展の裏側」
この法律の対象となった指定件数は年々積み重なっている。美術館のポスターには載らないが、ルーヴル展やプラド展のような大型展覧会の多くが、この仕組みに支えられている可能性がある。
世界の名品が日本に来られるのは、ロマンだけでなく、こうした法的な安全網があってこそだ。今年の夏、横浜で眺めるネックレスには、フランス革命前夜の歴史だけでなく、令和の日本の法律も刻み込まれている。
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【コラム】ストマッカーとは何か
今回の指定品にある「ストマッカー」は、17〜18世紀のヨーロッパで女性が胸元に着けた装飾的なパーツ。コルセットの上から胸の中央に当て、刺繍や宝石で飾られることが多かった。スリーブ(袖飾り)と対になることも多く、ドレスの華やかさを演出する重要な要素だった。ヴェルサイユの宮廷では衣装の格式が厳しく定められており、王妃マリー・アントワネットのストマッカーは当時の最高水準の職人技を集めたものとされる。
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2026年6月29日 官報 号外第143号(文部科学省告示第96号)
海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律(文化庁)
※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。


