スーパーの棚に差してある値札、宅配便の伝票、病院の受付で腕に巻いてもらうリストバンド。あの手の小さな紙やタグは、どこかの機械が刷ったものです。そして店の裏や倉庫では、従業員がそれを「ピッ」と読み取る黒い端末を握っています。
刷るほうと読むほうの両方で世界の大手にいるのが、今回の会社です。名前はゼブラ。ただし、日本の文房具のゼブラとは国も資本も違う、まったく別の会社です。
何をしている会社か:符号をデータに変える機械をつくる
ゼブラ・テクノロジーズは、米国証券取引委員会に提出した年次報告書(Form 10-K)で、自社を「自動認識とデータ取得(AIDC)業界の世界的リーダー」と説明しています。AIDCは耳慣れない言葉ですが、中身は単純です。モノや人に付いた符号を機械に読ませ、いま何がどこにいくつあるかをデータに変える技術のことです。
つくっているのは、業務用のモバイル端末、バーコードの読み取り機、RFIDリーダー、ラベルや身分証を刷る専用プリンター、屋内で位置を追う仕組み、そしてラベルなどの消耗品です。加えて、画像で異常を見つけるマシンビジョンや、セルフレジのタッチ画面も手がけています。
規模は、2025年12月期の売上高で53億9600万ドル。世界129拠点に従業員は約1万700人で、179か国で1万社を超える販売パートナーを通じて売っています。
代表商品・サービス:レジの向こう側にあるもの
一般の買い物客の視界に入りにくいのは、この会社の商品がほぼすべて「働く人が使う道具」だからです。年次報告書が挙げる主な利用先は、小売とEC、製造、運輸と物流、医療、宿泊と飲食、公的機関。つまり、レジの向こう側、バックヤード、工場のライン、病院の廊下です。
事業は2つに分かれています。ひとつは業務用のモバイル端末を扱う部門で、2025年12月期の売上高は29億6000万ドル。もうひとつは印刷とRFID、画像認識をまとめた部門で、同24億3600万ドルです。前者のほうがやや大きく、いまのゼブラは「プリンターの会社」というより「現場の端末の会社」に重心が移っています。

強み:読む側を、丸ごと買った
ゼブラはもともと、バーコードやラベルを刷るプリンターの会社でした。2007年から2008年にかけては、電波で人やモノの位置を追う技術を持つ会社を相次いで買収しています。ただ、製品の柱は一貫して印刷の側にあり、バーコードを読み取るスキャナーや、現場の作業員が持ち歩くモバイル端末は手薄でした。そこを一気に埋めたのが、2014年10月27日に完了した買収です。
相手はモトローラ・ソリューションズのエンタープライズ事業。年次報告書によれば、対価は34億5000万ドルの現金でした。この事業には、バーコードの読み取り機を早くから手がけてきたシンボル・テクノロジーズが含まれていました。
金額の大きさは、買った側の規模と並べると分かります。ゼブラの売上高は買収前年の2013年12月期で10億3800万ドル。つまり、自社の年商の3倍を超える買い物です。その結果、2015年12月期の売上高は36億5200万ドルに跳ね上がりました。刷る会社が、読む会社を丸ごと抱え込んだわけです。
現場の道具は、一度入れると簡単には入れ替えられません。端末とプリンターとソフトを一式でそろえられること、そして1万社を超える販売パートナーが各国で導入と保守を担うこと。この2つが、いまの強みの中身です。
日本との関係:競合の欄に、見慣れた社名が並ぶ
年次報告書の競合企業の欄を読むと、日本の読者には見慣れた社名が並びます。プリンターではサトーと東芝テック、固定式のスキャナーやマシンビジョンではキーエンスとSICK、モバイル端末ではパナソニックとデータロジック。ゼブラが戦っている相手の何社かは、日本の会社です。
一方で、日本企業と組んでもいます。シャープマーケティングジャパンは、自社のAndroid搭載ハンディターミナル「RZ-H270シリーズ」にゼブラのソフトウェア群とセキュリティを載せた製品を出しており、同社は提携ページでゼブラを、業務用デバイスの世界シェアが50%を超える企業だと紹介しています。両社はグーグルのAndroid Enterprise Partner Programでゴールドパートナーに認定されています。
日本法人はゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社で、日本語の公式サイトもあります。導入事例も日本語で公開されており、たとえば新潟県燕市の江部松商事は、ゼブラのハンディ端末を入れて倉庫内を歩き回る時間を1日あたり合計で約23時間減らしたと発表されています。
アメリカ人にとっては:日曜の午後、選手の肩の中に
アメリカでこの会社の名前を見る場所は、意外にもフットボールの中継です。
NFLのフットボール運営部門の公式サイトによれば、選手やボールの動きを追う「ネクスト・ジェン・スタッツ」は、ゼブラとウィルソン・スポーティング・グッズとの提携で開発され、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の基盤の上で動いています。全会場に据えられた仕組みは、20台から30台の超広帯域受信機と、選手の肩パッドに仕込まれた2個から3個のRFIDタグ。審判、ピロン、ダウン計測のスティックとチェーン、そしてボールの中にもタグが入っています。1試合あたり、会場にはおよそ250個の装置が置かれる計算です。
集まるのは、位置、速度、走った距離、加速度を1秒間に10回。個々の動きをインチ単位で描き、1プレーごとに200を超えるデータが新たに生まれます。テレビの画面に「最高速度は時速何マイル」「走った距離は何ヤード」と出てくる数字の出どころが、この仕組みです。
倉庫でフォークリフトを追うのも、スタジアムでランニングバックを追うのも、技術としては同じ「いま、どこにいるか」の計測です。ゼブラはそれを、日曜の午後の娯楽に転用しました。
トリビア:雑談で使える一言
ひとつめ。日本で「ゼブラ」といえば1897年創業の文房具メーカーですが、S&P500に入っているゼブラは1969年に米国で始まった別の会社です。ボールペンは1本もつくっていません。
ふたつめ。この会社の売上の集中ぶりは、かなりのものです。年次報告書によれば、2025年12月期は3社の販売代理店がそれぞれ売上高の10%以上を占め、上位1社だけで29%。3社を合わせると6割近くに届きます。相手が企業だけの商売は、こういう形になります。
みっつめ。株式を公開したのは1991年8月です。バーコードのプリンターを売る会社として上場し、いまはフットボールの試合のデータまで支えています。
そしてもうひとつ。NFLのタグは選手だけではなく、ボールにも入っています。次に中継を見るとき、画面に映るあの楕円形の中身が、実は少しだけ電子機器だと思うと見え方が変わるかもしれません。
これであなたは、500社のうち5社を知りました。
参考にした一次情報
- Zebra Technologies Corporation Form 10-K(2025年12月期)
- Zebra Technologies Corporation Form 10-K(2015年12月期・モトローラ買収の記載)
- Zebra Technologies Corporation Form 10-K(1996年12月期・株式公開の記載)
- Zebra Technologies Corporation Form 10-K(2011年12月期・2007年から2008年の買収の記載)
- NFL Football Operations「Performance Tracking Data(Next Gen Stats)」
- シャープマーケティングジャパン「シャープとゼブラの戦略的提携で実現したAndroid搭載ハンディターミナル」
- ゼブラ・テクノロジーズ公式サイト(英語)
- ゼブラ・テクノロジーズ日本語サイト
- ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン プレスリリース(江部松商事の導入事例)
- ゼブラ株式会社(文具メーカー)沿革
※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。


