アメリカの家の9割超はお湯を貯めるタンク式 自社タンクの内側をガラスで覆ったA.O.スミス【あなたの知らないS&P500】

アメリカの家は湯を貯めてから使う。A.O.スミスを紹介するアイキャッチ画像 あなたの知らないS&P500

アメリカの住宅には、大きな金属製の円筒が据えられています。中身はお湯です。使うぶんだけそのつど沸かすタンクレス式とは違い、あらかじめタンクに湯を貯めておき、減ったらまた温める。日本からは見えにくい、アメリカの家の当たり前です。

アメリカの家は、お湯を貯めてから使う

アメリカのエネルギー情報局(EIA)の住宅エネルギー消費調査によると、2020年時点の全米1億2353万戸のうち、主に使っている給湯器がタンクを持たない瞬間式(タンクレス)だった住宅は803万戸でした。残りはすべてタンク式です。割合にすると、タンク式が9割超を占めています。

しかも、そのタンクは小さくありません。50ガロン(約190リットル)以上の湯を貯める大型タンクを主給湯器にしている住宅が4685万戸あります。使う前から、それだけの湯が家のなかで温められ続けていることになります。

この「貯めておく」文化のまんなかにいるのが、今回の会社です。

COMPANY FILE ── 500分の13社目

社名A.O.スミス(A. O. Smith Corporation)
ティッカーAOS(ニューヨーク証券取引所)
本社ウィスコンシン州ミルウォーキー
創業1874年
業種給湯機器・ボイラー・水処理機器の製造
日本法人子会社一覧の設立法域にJapanの記載なし
公式サイトaosmith.com(英語)
日本語サイト今回確認できず

A.O.スミス(A. O. Smith Corporation)。ウィスコンシン州ミルウォーキーに本社を置く、住宅用・業務用の給湯器とボイラー、水処理機器のメーカーです。2025年12月期の売上高は38億3020万ドル、純利益は5億4620万ドルでした。売上の78%が北米、残る22%が北米以外で、その大半は中国です。同社は年次報告書(Form 10-K)で、自社を北米で最大の給湯器メーカーだとしています。

作っているものは、住宅の給湯器だけではありません。年次報告書は、レストラン、ホテル、ランドリー、洗車場、学校、小規模事業所を用途として挙げています。同社の住宅用・業務用の給湯器は主に40〜80ガロン(約150〜300リットル)で、小さいものは2.5ガロン(約9リットル)、大きいものは2500ガロン(約9460リットル)まであります。

100年ほど前は、車の骨組みを作っていた

ところが、この会社は給湯器メーカーとして生まれたわけではありません。

始まりは1874年の夏、ミルウォーキー北部です。チャールズ・ジェレマイア・スミスが自宅の外に「C. J. SMITH, MACHINIST(機械工)」という看板を掲げました。金属加工の腕を買われ、やがて乳母車や自転車の部品を供給する会社に育ちます。

転機は1899年でした。創業者の息子アーサー・O・スミスが、プレス加工した鋼板による軽量の自動車フレームを開発します。自動車が生まれたばかりの時代です。1921年には「メカニカル・マーベル」と名づけた自動車フレームの全自動生産ラインを公開しました。A.O.スミスの記録では、1日1万台、8秒に1台のペースでフレームを組み上げる設備でした。

つまり100年ほど前のこの会社は、給湯器ではなく車の骨組みを作る会社だったのです。自動車部品から完全に手を引いたのは1997年で、参入から98年が経っていました。

ガラスを鋼に融着させる

給湯器への道を開いたのは、1930年代半ばの技術です。

A.O.スミスは1930年代半ばに、ガラスを鋼に融着させる方法を完成させました。1936年には、給湯器タンクにガラス内張りを施す製法の特許を取得しています。同社の現在の製品説明では、内側をガラスで覆うことで鋼のタンクを錆から守っているとされています。

面白いのは、この技術から生まれた製品の顔ぶれです。同社の社史は、ガラス内張りの新製品としてビール樽、醸造タンク、そして家庭用の給湯器を並べて挙げています。ビールを詰める樽と、風呂の湯をためるタンクが、同じ技術から出てきたことになります。

1948年にはコイル式の業務用給湯器を手がけるバーケイ社を買収し、瞬間式の市場にも入りました。その5年後には、ガラス内張りの業務用給湯器を製品化しています。

A.O.スミスの沿革タイムライン。1874年の機械工場から2024年の創業150年まで
A.O.スミスの150年。自動車部品から給湯器へ方向を変えた(編集部作成)

商売の柱は「買い替え」

この会社の商売には、大きな特徴があります。年次報告書は、北米の売上の相当部分が既存製品の買い替えによるものだと説明しています。

先ほどの調査には、給湯器の古さの内訳もあります。2020年時点で、主給湯器の使用年数が10年から14年の住宅は2510万戸、15年以上は1933万戸ありました。合わせて4443万戸が、それなりの年月を経た機械で毎日の湯をまかなっていることになります。

年次報告書は2025年について、住宅用給湯器の買い替えの動きが堅調だったとも述べています。新築の着工とは別の軸で、すでに据えられている機械が入れ替わっていく市場があるわけです。

日本の会社が、タンクの国に入っている

この会社が年次報告書と一緒に出している子会社・関連会社の一覧(2025年12月期)を見ると、設立法域の欄に「Japan」の記載はありません。中国、インド、ベトナム、オランダ、カナダなどは並んでいますが、日本はそこにない。それでも、日本との接点はあります。

A.O.スミスは年次報告書のなかで、北米の給湯器・ボイラーの主な競合として、リーム、ブラッドフォード・ホワイト、リンナイ、エアコ、ナビエンの5社を挙げています。リンナイは愛知県名古屋市中川区に本社を置き、1920年に創業した日本の熱エネルギー機器メーカーです。そのリンナイが、アメリカの給湯器市場では名指しの競争相手として登場します。

先ほどのタンクレスの数字も、あわせて見ると景色が変わります。同じ調査の2015年版では、全米1億1820万戸のうちタンクレスは300万戸でした。主給湯器がタンクレスの住宅の割合は、2015年の約2.5%から2020年の約6.5%に上がっています。

A.O.スミス自身も、タンク式だけの会社ではありません。北米では電気・ガスのタンク式に加え、タンクレス、ヒートポンプ式、太陽熱式まで手がけています。2024年には凝縮式のガスタンクレス給湯器「ADAPT」と、業務用のヒートポンプ給湯器「VERITUS」を投入し、翌2025年に品ぞろえを広げました。

この会社のトリビア

  • ビール樽と給湯器は兄弟:A.O.スミスのガラス内張り技術からは、ビール樽、醸造タンク、家庭用給湯器が生まれました。飲み物の樽と風呂の湯のタンクが、同じ発想でできています
  • 2024年で創業150年:1874年に自宅の外に掲げた1枚の看板から始まり、現在の従業員は約1万1500人です
  • 中国で30年:北米以外の売上の大半は中国です。同社は中国での事業を30年続けていると説明しています
  • 水を「きれいにする」側にも:2024年にユニリーバから南アジアの浄水器事業ピュアイットを約1億2500万ドルで取得し、2025年の売上に5400万ドルを寄与しました

アメリカの家で蛇口をひねると、多くの場合、前もってタンクに貯められていた湯が出てきます。その静かな仕組みを、1874年の機械工場から続く会社が支えている。日本からは見えにくいアメリカの日常が、この1社から見えてきます。

そして、身近な接点は、もう1つあります。S&P500に連動するインデックス投信を積み立てているなら、その投信を通じて、この会社への投資を間接的に含んでいることになります。

これであなたは、500社のうち13社を知りました。

リファレンス

※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。

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