AIが雇用を奪うのか、それとも新しい仕事を生むのか。この議論はここ数年、ずっと平行線をたどってきました。そこに2026年7月2日、米ゴールドマン・サックスが公開した経済ポッドキャスト「Exchanges」で、MITの研究者が興味深いたとえ話を持ち出しました。「クラッシュする波(crashing waves)」と「満ちてくる潮(rising tides)」という2つの比喩です。
WORLD WORD FILE
crashing waves / rising tides(クラッシュング・ウェーブス/ライジング・タイズ)
| ひとこと定義 | AIによる雇用の変化は「大波」ではなく「潮の満ち引き」に近いという比喩 |
| 生まれた場所 | 米ゴールドマン・サックスの経済ポッドキャスト「Exchanges」(MIT研究者の発言) |
| 初出 | 2026年7月2日公開の対談内発言 |
きっかけ:ゴールドマン・サックスの対談
このたとえ話が登場したのは、ゴールドマン・サックスが2026年7月2日に公開した「How Will AI Impact the Labor Market?」という対談企画です。同社の看板レポート「Top of Mind」の最新版に合わせて配信されたもので、司会のアリソン・ネイサン氏が、MIT教授でノーベル経済学賞受賞者のダロン・アセモグル氏、同じくMITのニール・トンプソン氏、そしてゴールドマン・サックス・リサーチの経済チームを率いるジョセフ・ブリッグス氏の3者に、それぞれ話を聞く形で構成されています。
本来の定義:「波」と「潮」の違い
たとえ話を持ち出したのはニール・トンプソン氏です。「クラッシュする波」とは、浜辺で気持ちよく日光浴をしている人たちのところに、前触れなく大波が押し寄せてさらっていくイメージ。突然、何の心構えもないまま職を失う、という不安の象徴です。
これに対して「満ちてくる潮」は、足首、次はひざと、少しずつ、しかし着実に水位が上がっていくイメージです。潮の満ち引きは予測できるので、人々は変化に気づきながら備えることができます。トンプソン氏は、AIがもたらす雇用への影響は、前者の「クラッシュする波」よりも、後者の「満ちてくる潮」に近いという見立てを示しました。
なぜ今、この比較が議論を呼ぶのか
背景には、AIによる大量失業を懸念する声が欧米で強まっていることがあります。ゴールドマン・サックスのブリッグス氏によれば、現時点でもAIの影響はテック業界や経営コンサルティングなど一部の分野に限られ、月間の雇用者数の伸びを10万〜15万人程度押し下げる規模にとどまっているといいます。しかし今後、AIの全面的な導入が進めば、生産性が15%押し上げられると同時に、今後10年でアメリカの労働者の9%、およそ1500万人が別の職への配置転換を迫られる可能性があるとの見通しを示しました。
一方でブリッグス氏は、過去80年の雇用創出の85%が技術革新によってもたらされてきた実績を踏まえ、「AIによる恒久的な失業は見込んでいない」と述べています。年間で約3000万件の雇用が生まれる一方、約2900万件が失われるという労働市場の新陳代謝の速さを考えれば、新規雇用の創出ペースが5%加速するだけで、AIによる配置転換は十分に吸収できるという立場です。
論点:見方は分かれている
3人の見立てには、はっきりとした温度差があります。
- ブリッグス氏(比較的楽観):配置転換は避けられないが、新規雇用の創出で長期的には吸収可能。失業率の押し上げは年1ポイント未満にとどまる見込み
- トンプソン氏(構造的に楽観):仕事は複数のタスクの集合体であり、AIが得意な部分と苦手な部分が入り混じるため、一律の「仕事消滅」にはなりにくい。どのタスクが自動化されるかによって、賃金が上がる職種と下がる職種の両方が生まれる
- アセモグル氏(相対的に慎重):2027年ごろから、定型的な認知業務(カスタマーサービスや事務作業など)を中心に純減が始まると予想。向こう5年で2〜4%の純減、AIへの投資が「労働者を補完する方向」に向かわなければ、10〜15年でさらに損失が拡大する可能性があると警告
3人に共通するのは、「AIの影響は一様ではなく、どのタスクが自動化されるか、企業がどこに投資するかによって結果が大きく変わる」という視点です。
日本への示唆
日本の労働市場は、終身雇用や社内での配置転換に慣れているという特徴があります。トンプソン氏の言う「潮が満ちてくる」変化への向き合い方という観点では、変化の予兆を早めにつかみ、社内での再配置や学び直しの制度を整えておくことが、急激な「波」に飲まれないための備えになりそうです。一方で、アセモグル氏が指摘する「労働者を補完する投資」が十分に行われるかどうかは、日本企業にとっても他人事ではない論点といえます。
How Will AI Impact the Labor Market?(Goldman Sachs Exchanges)
An AI Job Apocalypse?(Goldman Sachs Top of Mind)
※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。


