株価指数は上がったのに100万円が47万円に レバレッジ商品を襲う「ボラティリティ・ディケイ」

ボラティリティ・ディケイの解説記事のアイキャッチ画像 世界のアタマのなか

元になっている株価は2割ほど下がった。ところが、その株価に連動するはずの商品の値段は8割下がっていた。2026年7月の韓国で実際に起きたことです。相場を読み間違えたから、ではありません。商品の設計にあらかじめ組み込まれた算数が、静かに元本を削り取っていました。英語圏の金融の世界では、この現象に名前が付いています。

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volatility decay(ボラティリティ・ディケイ)

ひとこと定義値動きが激しいほど、レバレッジ型商品の値段が自然に目減りしていく現象
生まれた場所米国の金融規制・運用業界。レバレッジ型ETFの普及とともに使われるようになった
初出日々リセット型の商品への注意喚起は2009年の米金融当局の通知にさかのぼる。現行の解説は米証券取引委員会の投資家向け公報(2023年8月改訂版)

きっかけ:16本の商品が、同じ日に売り出された

韓国の金融委員会は2026年1月30日、国内のETF市場の規制を見直す案を公表しました。当時の韓国のルールでは、ETFは10銘柄以上に分散して投資しなければならず、1銘柄あたりの比率も30%までと決められていたため、特定の1社の株だけに連動するETFをつくることができませんでした。一方で、米国や香港にはそうした商品があり、韓国の投資家は国内の証券会社のアプリから海外上場の商品を買えていました。この差を埋め、投資家のお金が海外に流れ出るのを抑えることが、見直しの狙いとして挙げられていました。

こうして、単一の銘柄に連動するETFが解禁されます。報道によれば、8つの運用会社による16本の商品が2026年5月27日にそろって上場しました。対象はサムスン電子とSKハイニックスの2社で、倍率は2倍が上限とされました。個人投資家の買い越し額は、7月20日までに14兆ウォンに達したと伝えられています。

そして7月、韓国の株式市場は急落しました。報道によると、SKハイニックス株の日々の値動きの2倍を目指す商品は、6月の高値から約7割、上場した5月27日からでも約5割下落しました。7月下旬の時点では、6月23日の高値からの下落率は8割を超えたと伝えられています。サムスン電子株に連動する同種の商品も、6月上旬の高値から7割超下がったとされます。同じ期間の原資産となる2社の株価の下落は、2割から3割程度と報じられています。

韓国の金融当局は7月16日、この種の商品の新規上場を当面停止し、取引を始めるために必要な最低預託金の引き上げなどの措置を打ち出しました。金融委員会は7月24日、その実施時期を8月から7月31日に前倒しすると発表しています。

本来の定義:1日ごとに組み替える、という設計

この現象を理解する鍵は、レバレッジ型の商品が「1日単位」の約束しかしていない、という点にあります。米証券取引委員会の投資家向け公報は、レバレッジ型・インバース型のETFの多くが日々リセットされる仕組みだと説明しています。2倍型の商品が目指しているのは、あくまで「その日の値動きの2倍」です。数週間、数か月という単位で見たときの成績は、原資産の値動きの2倍とは大きく違うことがあり、値動きが激しい相場ではその差がさらに広がる、と同公報は明記しています。

同公報が挙げている数字の例を、100万円を投じた場合に置き換えてみます。

  • 指数が1000から10%下がって900になった日、2倍型の商品は20%下がる。100万円は80万円になる
  • 翌日、指数が10%上がって990に戻る。2倍型の商品は20%上がるので、80万円は96万円になる
  • 2日間の合計では、指数は1%の下落。ところが2倍型の商品は4%の下落。下落率は2倍ではなく4倍になっている

商品はどちらの日も、約束どおり「その日の2倍」を達成しています。それでも2日間を通すと、原資産の99万円に対して96万円と、3万円の差が生まれます。上がった日の20%は、下がった後の小さくなった元本にかかるためです。この目減りが、値動きが激しいほど、そして日数が重なるほど積み上がっていきます。

なぜ今、この言葉が語られているのか

米証券取引委員会の公報は、実際に起きた例も紹介しています。ある指数が4か月間で2%上昇したにもかかわらず、その指数の日々の値動きの2倍を目指す商品は6%下落しました。同じ期間、別の指数は約8%上昇したのに、その3倍を目指す商品は53%下落しています。100万円を投じていれば、前者は94万円、後者は47万円になっていた計算です。指数は上がっていて、方向の読みは当たっていた期間の話です。

仮に、原資産が毎日10%上昇と10%下落を交互に繰り返し、それが20営業日続いたとしましょう。この場合、原資産は約9.6%下落して100万円が約90万4000円になりますが、2倍型の商品は約33.5%下落し、100万円が約66万5000円になります。原資産の2倍どころか、3倍以上の目減りです。これは前提を置いた機械的な計算ですが、1日に5%から10%動く日が続いた2026年7月の韓国市場は、この計算に近い環境でした。

そこに、もうひとつの要素が重なります。同公報は、単一銘柄型のETFについて別項目を設け、指数ではなく1社の株の値動きに連動するため分散の効果が失われ、その株を直接持つ場合よりも大きな値動きとリスクを投資家が引き受けることになると指摘しています。値動きの激しさが目減りを生み、単一銘柄型はその値動きの激しさを最大にする。この二つが同じ商品に同居したことが、今この言葉が語られている理由です。

論点:商品の問題か、使い方の問題か

見方は分かれています。ひとつは、商品そのものが個人向けに適さないという立場です。韓国では商品の廃止を求める請願が国会に出されたと報じられており、金融当局の担当者も、商品の上場から1か月あまりで安全措置を導入するのは極めて異例だと述べたと伝えられています。

もうひとつは、商品は短期の道具として設計されており、長く持つ使い方をしたことが問題だという立場です。米証券取引委員会の公報も、これらは専門的な商品であり、一般に買って持ち続ける投資家には向かないと明記しています。つまり、目減りは不具合ではなく仕様として最初から開示されていた、という整理になります。

解禁の判断そのものへの評価も一様ではありません。海外にある商品を国内でも扱えるようにして投資家の選択肢を広げるという当初の狙いに一定の理があるという見方と、上位2社で指数の時価総額の半分を占める市場に持ち込むには設計が合っていなかったという見方が、いずれも報じられています。

日本への示唆:同じ算数は、日本の商品にも働いている

日本取引所グループのレバレッジ型・インバース型商品の銘柄一覧を見ると、上場しているのはTOPIXやNASDAQ100などの株価指数、国債先物、REIT指数に連動する商品で、個別企業の株価に連動する2倍型は掲載されていません。韓国で起きたことがそのまま日本で起きる構図には、いまのところなっていません。

ただし、目減りの算数は連動対象が指数であっても同じように働きます。同じ一覧には「長期投資向け」という欄があり、東京証券取引所が一定の基準で選んだ銘柄に印が付く仕組みになっていますが、レバレッジ型・インバース型の一覧では、どの銘柄にもその印は付いていません。取引所の側が、この種の商品を長く持つ想定に置いていないことが、一覧の欄そのものに表れています。

ボラティリティ・ディケイという語に定着した日本語訳はありません。編集部であえて訳すなら「ゆらぎ減価」でしょうか。相場が上がるか下がるかではなく、揺れたこと自体が費用として引かれていく。韓国の2か月は、その費用がどこまで大きくなりうるかを、数字で残した記録になりました。

リファレンス

※本記事はAIを活用して作成し、編集部が一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。

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