2026年(令和8年)7月1日、金融庁は住信SBIネット銀行株式会社を「特定社会基盤事業者」として指定した。根拠となるのは、2022年(令和4年)に成立した経済安全保障推進法だ。官報第1738号(金融庁告示第四十三号)に掲載された。
「重要インフラ」に指定されると何が変わるのか
特定社会基盤事業者とは、国民生活や経済活動の基盤を担う事業者として国が指定するものだ。電力・ガス・通信・鉄道といった従来型のインフラ事業者に加え、金融機関もその対象となっている。指定を受けた事業者は、重要設備の導入・維持管理を外部委託する際に事前届出が必要となり、国はその内容を審査できる。自由な事業運営に一定の制約がかかる一方で、国による保護や情報共有の対象にもなる。
なぜ「ネット銀行」が対象になったのか
注目すべきは、指定を受けたのが「ネット銀行」であるという点だ。住信SBIネット銀行は店舗を持たず、すべてのサービスをオンライン上で提供する。口座開設から振込、住宅ローンの申し込みまで、スマートフォン一台で完結する設計が特徴だ。2007年の開業以来、利便性の高さから利用者数を伸ばし続け、2023年には東京証券取引所への上場も果たしている。
かつて「インフラ」といえば、物理的な設備を持つ事業者を指すのが常識だった。変電所、パイプライン、線路——目に見える設備が社会を支えるという前提だ。しかしデジタル化の進展とともに、その概念は大きく塗り替えられた。今や何百万人もの給与振込や公共料金の引き落としを担うネット銀行のシステムが止まれば、人々の日常生活に直接的な打撃を与える。国がその現実を正式に認めた形といえる。
デジタルが「インフラ」になった時代の安全保障
利便性を追求して誕生したネット銀行が、今や国家安全保障の枠組みの中に組み込まれた。背景にあるのは、特定の国や勢力によるサイバー攻撃やシステムへの不正アクセスへの懸念だ。平時から重要インフラの管理状況を国が把握し、リスクを事前に排除しようという発想で設計されている。住信SBIネット銀行のような「画面の中だけで完結する銀行」が対象に加わったことは、この制度が現代のインフラの実態に追いついたことを示している。
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【コラム】経済安保推進法が定める「14分野」とは
経済安全保障推進法(2022年成立)は、重要インフラの安全性確保を4本柱の一つに位置づけている。特定社会基盤事業者の対象分野は電気、ガス、石油、水道、鉄道、貨物自動車運送、外航貨物、航空、空港、電気通信、放送、郵便、金融、クレジットカードの14分野だ。かつては物理的な設備を持つ業種が中心だったが、近年は金融・通信といったデジタルインフラが重みを増している。今回の住信SBIネット銀行の指定は、その流れを象徴する一例といえる。
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リファレンス
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