ポリチュニティ 「複合危機」を好機に変える新語

ポリチュニティ 「複合危機」を好機に変える新語 読み物(世界のアタマのなか)

「複合危機(ポリクライシス)」ということばを、最近よく見かけないだろうか。紛争、貿易摩擦、格差、民主主義の後退——ばらばらの危機が次々と連鎖する今の世界を、多くの識者はそう呼んできた。だが、この不穏な合言葉に真っ向から異を唱える研究者がいる。彼女が対抗馬として掲げるのが「ポリチュニティ」という聞き慣れない言葉だ。

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Polytunity(ポリチュニティ)

ひとこと定義「複合危機」の裏返し。危機の同時多発を変革の好機と読み替える言葉
生まれた場所アメリカ・ジョンズホプキンス大学(政治経済学者ユエン・ユエン・アン氏)
初出2024年11月、Project Syndicateへの寄稿で初めて使用

きっかけ:いま話題になっている理由

2026年2月、学術誌Oxford Development Studiesに「Turning Polycrisis into Polytunity(複合危機を好機に転じる)」という論文が掲載された。著者はジョンズホプキンス大学の政治経済学者ユエン・ユエン・アン氏。中国の政治経済を専門とする研究者で、同大学のシンクタンク「SNF Agora Institute」内に「The Polytunity Project」という拠点まで構えている。

この語はもともと2025年10月、経済コラム配信サイトProject Syndicateに寄せたエッセイ「The Global Polytunity」で広く知られるようになった。このエッセイはシンガポール・台湾・香港・ドミニカ共和国・アルゼンチンなど各地のメディアに転載され、中国語・スペイン語・ドイツ語・ペルシャ語・ルーマニア語など複数言語に訳されている。学術誌への掲載は、そうした論壇での広がりに続く一段の「格上げ」といえる動きだ。

本来の定義:どこから来た言葉か

ポリチュニティ(Polytunity)は、poly(複数の)とopportunity(好機)を組み合わせた造語だ。名づけの元になっているのが「polycrisis(複合危機)」という語で、こちらは1990年代にフランスの理論家エドガール・モランらが提唱し、2023年ごろから歴史学者アダム・トゥーズ氏らが広め、世界経済フォーラム(ダボス会議)周辺でも定着した経緯がある。

アン氏によれば、ポリチュニティという語自体は2024年11月のProject Syndicateへの寄稿で初めて使い、同月に国連開発計画(UNDP)の国際会議でも取り上げたという。そこから2025年6月のDevelopment Studies Association年次大会での基調講演、同年10月の「The Global Polytunity」エッセイ、そして2026年2月の学術論文へと、1年余りをかけて議論が積み重ねられてきた。

なぜ今、広がっているのか

アン氏の主張の核は「複合危機ということば自体が、恐怖を煽ることで思考停止を招いている」という批判にある。エッセイの中で彼女は、歴史学者トゥーズ氏の「これがあなたを苦しめている正体だ、と名付けること自体に効能がある」という趣旨の発言を引きつつ、「恐怖が主題になった時点で、待っているのは不安と麻痺だけだ」と反論している。

そのうえでアン氏が掲げるのが「AIM(Adaptive・Inclusive・Moral Political Economy=適応的・包摂的・道徳的な政治経済学)」という枠組みだ。社会を機械ではなく複雑適応系として捉え直し(Adaptive)、西洋基準を唯一の物差しにせず多様な発展の道筋を認め(Inclusive)、誰の知識が正統とされてきたかという偏りを問い直す(Moral)——この3本柱を通じて、危機の同時多発を「これまでの秩序が崩れるからこそ、根本からの作り直しが可能になる好機」と読み替えようというのが提案の骨子だ。

翻訳・転載が世界各地に広がっている点も特徴的で、香港の英字紙は同氏の中国研究の知見と絡めて紹介し、カナダの未来予測系ニュースレターはインドの「ジュガード(限られた資源で工夫して切り抜ける発想)」との類似性を指摘するなど、欧米以外の読者層からの反応も目立つ。

論点:見方は分かれている

好意的な反応としては、Development Studies Associationでの基調講演を聞いた研究者が「複合危機というヨーロッパ中心的な見方から、ポリチュニティという統一的でグローバルな視点への転換を促す、示唆に富む講演だった」と評したケースや、開発経済学の専門メディアが「(アン氏の議論は)決定的な批判だ」と評価したケースがある。

一方でアン氏自身も、「ポリチュニティは、実存的な脅威を前にした能天気な楽観論を呼びかけるものではない」とわざわざ釘を刺している。裏を返せば、「危機を好機と呼び替えるだけの前向きなスローガンではないか」という受け取られ方をしうることを、提唱者自身が意識しているとも読める。「複合危機」自体もかつて、一部の経済学者から「実態を説明しない流行語」と批判された経緯があり、対抗馬であるポリチュニティが今後同種の検証にさらされるかどうかは、まだこれからの段階といえそうだ。

日本への示唆

対岸の話に見えて、実は日本にも重なる部分がある。人口減少、財政の制約、地政学的な立ち位置の見直し——日本が抱える構造的な課題も、「危機」という一つの言葉でまとめて語られがちだ。ポリチュニティが提起しているのは、危機の同時発生を嘆くだけでなく、そこから何を作り直せるかという問い直しの姿勢であり、その意味では特定の国や地域に限らず、応用の余地がある視点なのかもしれない。

編集部で訳すなら「複合好機」でしょうか。

リファレンス

Yuen Yuen Ang「The Global Polytunity」(Polytunity, 2025年10月29日)
Yuen Yuen Ang公式サイト「Polytunity」
Johns Hopkins大学 SNF Agora Institute「Polycrisis vs. Polytunity: Global Echoes」
Ang, Yuen Yuen (2026)”Turning Polycrisis into Polytunity,” Oxford Development Studies(DOI)

※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。

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