ゲノム編集した胚の胎内移植を原則禁止 成立したヒトゲノム編集胚規制法を条文で読む

胎内への移植を原則禁止 ヒトゲノム編集胚規制法が成立 ひらけ!条文

※追記(2026年8月13日):この記事は法律案の審議中に公開したものです。ヒトゲノム編集胚等の取扱いの規制に関する法律は、2026年7月17日に参議院本会議で可決されて成立し、同月24日に令和8年法律第70号として公布されました。以下の本文は、公開時点(2026年7月15日)の内容に、その後の確認をふまえた修正を加えたものです。

「ゲノム編集された赤ちゃん」と聞くと、SF映画の話のように感じるかもしれません。しかし2018年、中国で実際にゲノム編集を受けたとされる双子が誕生したことが世界に衝撃を与えました。日本ではこれまで、ヒト受精胚にゲノム編集技術を用いる研究について、国の倫理指針(告示)がルールを定めてきました。しかし、法律による規制はありませんでした。

その空白を埋めるための法律案が、2026年4月10日に国会へ提出されています。名称は「ヒトゲノム編集胚等の取扱いの規制に関する法律案」。2026年6月16日に衆議院本会議で可決され、7月17日に参議院本会議で可決されて成立しました。7月24日に令和8年法律第70号として公布されています。

主な条文をひらいて、何が禁止され、何が許され、違反すればどうなるのかを見ていきます。

第一条:この法律がめざすもの

第一条は、この法律の目的を定めています。ヒトの胚(受精卵など)や生殖細胞にゲノム編集技術を使うと、「予測し得ない遺伝子改変」が起きるおそれがあり、それが本人だけでなく将来の世代にまで影響を及ぼしかねない、という懸念が出発点です。そのうえで、次の措置を講じることによって、人の生命・身体の安全の確保を図り、あわせて科学技術の健全な発展にも寄与することを目的としています。

  • ヒトゲノム編集胚等を人・動物の胎内に移植することを禁止する
  • ヒトゲノム編集胚等の作成・譲受け・輸入・使用を規制する
  • そのほか、ヒトゲノム編集胚等の適正な取扱いを確保するための措置を講じる

「一律に禁止するだけでなく、研究の発展とのバランスも取る」という姿勢が、目的規定の時点で示されています。

第二条:まず「何を規制するのか」を定義する

法律は、規制対象を条文の言葉で正確に定義することから始まります。第二条ではこう定めています。

  • ヒト胚:受精卵など、そのまま育てば1つの個体になり得る細胞・細胞群(生殖細胞は除く)のうち、胎盤ができる前の段階のもの
  • ヒト生殖細胞:精子や未受精卵(それらに変化する途中の細胞も含む)
  • ゲノム編集技術等:DNAの特定の配列を切ったり書き換えたりする技術など、遺伝子の発現に影響を与えうる技術(具体的な範囲は政令で定める)
  • ヒトゲノム編集胚等:上記の技術で加工されたヒト胚、加工されたヒト生殖細胞、そして加工されたヒト生殖細胞と別のヒト生殖細胞との受精によってできたヒト胚(ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律が定める「特定胚」にあたるものは除く)

つまり「編集された精子・卵子」だけでなく、「編集された生殖細胞から生まれる受精卵」まで、規制の網が及ぶよう設計されています。

第三条:核心のルール――胎内への移植を禁止

この法律の一番の核心が第三条です。

何人も、ヒトゲノム編集胚等を人又は動物の胎内に移植してはならない。(後略)

「何人も」ですので、研究者・医療者に限らず、誰であっても対象になります。ただし例外もあります。動物の胎内に移植する場合で、「胎盤の形成を開始する可能性がない」という条件を満たすときは禁止の対象外です(具体的な要件は政令で定める)。

第四条・第五条:省庁がつくる「指針」に従う仕組み

第三条の「移植の禁止」以外の場面――たとえば研究目的でヒトゲノム編集胚等を作成・保有・使用するようなケース――については、法律が手続きの大枠を定めたうえで、許される用途や具体的な取扱いの要件は、厚生労働大臣・内閣総理大臣・文部科学大臣の3者が共同で定める「指針」に委ねる仕組みになっています(第四条)。指針を作る・変更する際には、あらかじめ総合科学技術・イノベーション会議の意見を聴かなければなりません。

そして第五条で、「ヒトゲノム編集胚等の取扱いは、指針に従って行わなければならない」と、指針の遵守義務が明記されています。

第六条〜第十六条:ヒトゲノム編集胚等を扱う場合の届出・監督制度

指針とあわせて、実務面のルールを定めているのが第六条以降です。要点を絞ると、次のような制度になっています。

  • ヒトゲノム編集胚等を作成・譲受け・輸入・使用する者は、事前に「取扱計画書」を主務大臣に届け出る(第六条)
  • 届出が受理された日から60日を経過するまでは、作成・譲受け・輸入・使用に着手できない。ただし主務大臣が届出の内容を相当と認めたときは、この期間は短縮される(第七条・第八条)
  • 指針に適合しないと判断されれば、大臣が中止や改善を命じることができる(第七条・第十二条)
  • 取扱いの記録を作成・保存する義務がある(第十条)
  • 想定外に別のヒトゲノム編集胚等が生じてしまった場合も、届出が必要。ただし直ちに廃棄する場合を除く(第九条)
  • 提供者の個人情報の保護措置を講じる義務がある(第十三条)
  • 主務大臣は報告を求めたり、立入検査をしたりできる(第十四条・第十五条)

「事前届出+一定期間の着手の制限+事後の記録・検査」を組み合わせたチェック体制が組まれています。

罰則:胎内への移植は最も重く

罰則は行為の重さに応じて段階が分かれています。

  • 第三条(胎内移植の禁止)に違反した場合:10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科(第十九条)
  • 無届けでの作成・譲受け・輸入・使用、命令違反など:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第二十条)
  • 届出前の作成等の制限(第八条)への違反:6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(第二十一条)
  • 記録・報告・立入検査などの手続き違反:50万円以下の罰金(第二十二条)

法人の代表者や従業員が違反した場合、行為者本人だけでなく法人にも罰金刑が科される「両罰規定」も置かれています(第二十三条)。

附則:施行は公布から1年後

附則第一条により、この法律は公布の日から起算して1年を経過した日に施行されます(指針の準備に関する規定などは公布日から即施行)。また附則第二条では、施行後5年以内に制度の見直しを検討する規定も設けられています。

施行の時点ですでにヒトゲノム編集胚等を扱っている人については、施行から6か月間、指針の遵守義務(第五条)と取扱計画書の事前届出義務(第六条第一項)が適用されません。その後も取扱いを続ける場合は、その期限までに届け出る必要があります(附則第三条)。

まとめ

この法律は、ゲノム編集を用いたヒト胚の臨床利用に、罰則をともなう法律上の規制を初めて設けるものです。胎内への移植は原則として禁止し、それ以外の取扱いは、指針・届出・着手の制限・記録・報告徴収や立入検査によって管理する仕組みになっています。附則第五条により、施行日の前でも指針を定めることができるとされており、施行までに指針の中身がどこまで具体化されるかが、次の焦点になります。

リファレンス

ヒトゲノム編集胚等の取扱いの規制に関する法律案(法律案要綱)|厚生労働省
ヒトゲノム編集胚等の取扱いの規制に関する法律案(案文・理由)|厚生労働省

※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。

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