【追記・2026年8月13日】この記事は、法案が国会に提出された直後の2026年7月7日に公開したものです。その後、法案は2026年7月17日に成立し、7月24日に公布されました(令和8年法律第66号)。国会での修正はなく、条文の内容は提出時の法案のままです。施行は、一部の規定を除いて公布の日から起算して3か月を経過した日とされています。本文は法案提出時点の記述を土台に、条文の説明を一次情報にもとづいて見直したものです。
これまでの経緯
- 2017年6月:天皇の退位等に関する皇室典範特例法が成立。付帯決議で「安定的な皇位継承を確保するための方策」の検討が政府に求められる
- 2021年12月:政府の有識者会議が「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ」「旧11宮家の男系男子を養子として皇族に迎える」という2つの方策を提言
- 2022年1月:政府がこの検討結果を衆参の正副議長に報告
- 2026年6月10日:10回にわたる全体会議での議論を経て、衆参の正副議長が2方策を柱とする「衆参正副議長による議論のとりまとめ」を「立法府の総意」としてまとめ、同日、内閣総理大臣に手交
- 2026年6月30日:政府が臨時閣議で「皇室典範等の一部を改正する法律案」を決定し、国会に提出(第221回国会 閣法第64号)
- 2026年7月1日:森衆議院議長が与野党に「静ひつな環境」での成立を要請。一方で、法案の一部内容が「立法府の総意」と食い違うとして、野党側から反発の声が上がる
この法案は何を目指しているのか
政府の有識者会議は2021年の報告で、悠仁親王殿下以外の未婚の皇族が全員女性であることを踏まえると、現行制度のもとでは悠仁親王殿下が皇位を継承されたときにほかに皇族がいなくなることが考えられる、と指摘しました。そのうえで、皇位継承の問題とは切り離して皇族数の確保を図ることが喫緊の課題だとしています。今回の改正案は、皇位継承の順番そのものを変えるものではなく、「皇族の数をどう確保するか」という問題に対応するためのものです。柱は大きく2つです。
- 女性皇族が結婚しても、皇族のままでいられるようにする
- 旧皇族(旧11宮家)の男系男子を、養子として皇族に迎えられるようにする
ここから先は、この2つの柱について、条文レベルで何がどう変わるのかを1つずつひらいていきます。
条文をひらく①:女性皇族は結婚しても皇族のままでいられる
いまの制度
現行の皇室典範第12条は、皇族女子が天皇・皇族以外の者と結婚した場合、皇族の身分を離れると定めています。第13条は、親王または王が皇族の身分を離れるときに、その妃や直系卑属なども原則として同時に皇族の身分を離れる、と定めた条文です。第12条の例外を定めたものではありません。
変わること
改正案は、この第12条と第13条をまるごと削除します。かわりに第10条を改正し、これまで「皇族男子」の婚姻にだけ必要だった皇室会議の議を、内親王・女王を含む「皇族」の婚姻にも必要とする形に広げます。あわせて、例外を定めるただし書も加えられます。条文の該当部分を見ると、こう書かれています。
第十条中「皇族男子」を「皇族」に改め、同条に次のただし書を加える。
ただし、第十四条第一項の者でその夫を失つたものと天皇及び皇族以外の男子との婚姻については、この限りでない。、同条に次のただし書を加える。
ただし、第十四条第一項の者でその夫を失つたものと天皇及び皇族以外の男子との婚姻については、この限りでない。
つまりこういうこと
今までは「結婚=皇室を出る」という決まりでしたが、この第12条自体がなくなることで、内親王・女王は結婚しても皇族のままでいられるようになります。ただし結婚するには、これまで皇族男子に必要だった皇室会議の議という手続きが、内親王・女王にも同じように必要になります。加えられたただし書は、夫を亡くした親王妃・王妃が天皇・皇族以外の男性と再婚する場合には皇室会議の議を要しない、という例外を定めるものです。
経過措置について
この改正が施行される時点ですでに内親王・女王である人については、附則に例外規定が置かれています。本人が望めば、これまでどおり結婚と同時に皇族の身分を離れるという選択肢も残されています。つまり「今いる女性皇族」には、皇室に残るか離れるか、選ぶ余地があります。
論点になっている部分
女性皇族が結婚後も皇室に残った場合、その夫や生まれた子どもはどうなるのかという点は、衆参正副議長のとりまとめには記載されませんでした。政府は、記載がない以上は現行の皇室典範第15条が適用され、配偶者と子は皇族にならないと説明しています。この点は全体会議でも大きな争点になり、とりまとめまで時間を要した要因だったと国会で説明されています。法案が「皇族としない」設計をとったことについては、一部の会派から異論が出ました。
条文をひらく②:養子縁組で皇族を増やす、という新しい仕組み
いまの制度
現行の皇室典範第9条は、次のように定めています。
天皇及び天皇及び皇族は、養子をすることができない。。
現行の皇室典範は、天皇と皇族が養子をすることを認めていません。
変わること
改正案は、この第9条に例外規定を追加するとともに、皇室典範に「第六章 養子皇族男子」という章をまるごと新設します(新第38条)。条文が定める対象要件は次のとおりです。
- 養親になれる範囲:親王・親王妃・内親王・王・王妃・女王(皇嗣・皇嗣妃を除く)
- 養子の対象:皇室典範による皇族男子であった者の「嫡男系嫡出の子孫」で、現在皇族でない15歳以上の男子(衆参正副議長のとりまとめでは、1947年10月に皇籍を離脱したいわゆる旧11宮家の皇族男子の子孫が対象とされています)
- 条件:配偶者・子がいないこと
- 手続き:皇室会議の議決を経ること
つまりこういうこと
1947年に皇籍を離れた旧11宮家の皇族男子の嫡男系嫡出の子孫を、現在の皇族の養子として迎え入れることで、皇族の人数を増やそうという仕組みです。
条文をひらく③:養子になった人の「皇位継承資格」はどうなるのか
ここは、今回の法案で大きな論点の1つになった部分です。条文(新第38条)にはこう書かれています。
養子皇族男子(前項の規定により皇族となつた皇族男子をいう。以下この条において同じ。)については、第二条の規定は、適用しない。
皇室典範第2条は皇位継承の順位を定めた条文です。つまり、養子になった本人には、この条文が適用されない=皇位継承資格を持たない、ということです。
一方で、養子皇族男子の子孫については、こう定められています。
(前略)(前略)養子皇族男子の子孫に係る第二条及び第六条の規定の適用については、実方の系統によるものとする。
政府は「実方の系統」について、養子縁組による親族関係ではなく、旧11宮家の皇族男子だった人々との実際の血のつながりを指すと説明しています。つまり、養子になった本人に皇位継承資格はないけれど、その子は皇族の夫婦のあいだに生まれるため生まれながらの皇族となり、男子であれば現行の第1条・第2条によって皇位継承資格を持つ、という設計です。新第38条第6項は、その継承順位を実方の系統によって判断すると定めた規定です。新第38条第6項は、その継承順位を実方の系統によって判断すると定めた規定です。
論点になっている部分
2021年の有識者会議の報告にも、衆参正副議長のとりまとめにも、養子の子の皇位継承資格についての直接の記載はありません。一方、6月25日の全体会議ではこの扱いをめぐるやり取りがあったことが国会で明らかにされています。一部の会派はこれを「立法府の総意からの逸脱」だと批判し、政府・与党側は、記載がない以上は現行法の解釈がそのまま適用されるだけで、新しく設けた規定ではないという立場を取りました。
条文をひらく④:養子になった人は「本人の意思による離脱」の規定を使えない
現行の皇室典範第11条第1項は、15歳以上の内親王・王・女王が、本人の意思にもとづき、皇室会議の議を経て皇族の身分を離れる、と定めています。しかし改正案は、養子皇族男子である王についてこの規定を適用しないと定めています。
養子皇族男子である王については、第十一条第一項の規定は、適用しない。
つまりこういうこと
一般の皇族とは違い、養子になった人は第11条第1項による離脱の道を使えません。ただし、やむを得ない特別の事由があるときに皇室会議の議で皇族の身分を離れるという第11条第2項の道までは閉ざされていません。改正案には、その場合に養親との縁組が将来に向かって効力を失うと定めた規定も置かれています。摂政に就く順序についても、養子皇族男子は内親王・女王の次の順位とする規定が置かれています。
条文をひらく⑤:必要に応じて見直す規定も置かれている
法律案の附則第6条には、次のような見直し規定が置かれています。
この法律による改正後のそれぞれの法律の規定については、その施行の状況を踏まえて所要の検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。
2 前項の規定により検討を加えるに当たっては、皇族の数の確保の状況等を勘案し、必要があると認められるときは、三十年ごとに見直しが行われるものとする。
つまりこういうこと
施行の状況を踏まえて検討し、必要があると認められたときには措置を講じる、という条件つきの規定です。皇族数の確保の状況などを勘案し、必要があると認められるときは30年ごとに見直すという仕組みもあわせて置かれています。
コラム:なぜ「養子」という方法が選ばれたのか
旧11宮家が皇籍を離れたのは、1947年(昭和22年)のことです。戦後の新しい皇室制度のもとで、当時の11の宮家が皇族の身分を離れ、一般の国民になりました。それから約80年。2021年の有識者会議の報告では、皇族数を確保する方策として、養子縁組のほかに「皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする」案も挙げられていました。ただしこの案は、養子縁組などの方策では十分な皇族数を確保できない場合に検討すべきものと位置づけられています。
今回の改正案が選んだのは「養子縁組」という民法にもある仕組みを土台にしつつ、皇室典範に第六章という特別な章を新設する方法です。条文の中には「民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百九十八条の規定は、適用しない」という一文があります。民法第798条は、未成年者を養子にするには家庭裁判所の許可がいる、と定めた条文です。その適用を外したうえで、新第38条第1項が、養子縁組そのものの要件として皇室会議の議を経ることを求めています。民法の仕組みを下敷きにしながら、皇室典範の側で独自の要件を組み立てている、という条文の作りが見えてきます。
その後、どうなったのか
法案は2026年7月9日に衆議院の議院運営委員会に付託され、翌10日に同委員会と本会議で可決されました。参議院では14日に特別委員会に付託され、16日に同委員会、17日に本会議で可決されて成立しました。参議院では、立憲民主党が提出した修正案が否決されています。法律は7月24日に公布され(令和8年法律第66号)、一部の規定を除いて、公布の日から起算して3か月を経過した日に施行されます。
リファレンス
- 内閣官房「皇室典範等の一部を改正する法律案」骨子(PDF)
- 内閣官房「皇室典範等の一部を改正する法律案・理由」(PDF)
- 自由民主党「皇族数の確保は喫緊の課題 皇室典範等改正案を閣議決定」
- 参議院 議案情報「皇室典範等の一部を改正する法律案」(第221回国会 閣法第64号)
- 衆議院 議案情報 第221回国会 議案の一覧
- 衆議院 議案本文「皇室典範等の一部を改正する法律案」(第221回国会 閣法第64号)
- 衆議院「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応について」(衆参正副議長による議論のとりまとめ)
- 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議 報告(概要)(PDF)
- 衆議院 会議録 第221回国会 議院運営委員会 第34号(2026年7月10日)
- e-Gov法令検索「皇室典範」(昭和22年法律第3号)
※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。


