2026年7月23日、官報の号外(第163号)で1つの法律が公布されました。「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(法律第64号)です。
240ページに及ぶこの号外の中に、暗号資産(仮想通貨)の取引ルールを根本から変える規定が含まれています。これまで「決済手段」として資金決済法で規制されてきた暗号資産が、株式や債券と同じ「金融商品」として金融商品取引法の対象に移管されたのです。
中でも注目すべきは、暗号資産にインサイダー取引規制が新設されたことです。
3つの「公表前に売買してはいけない」ルール
改正法は、暗号資産のインサイダー取引を3つの類型で禁止しています。官報に掲載された法律のあらましから、その骨格を見てみましょう。
1つ目は「特定暗号資産発行者関係者」による取引の禁止です。暗号資産を発行する組織の関係者が、その暗号資産に関する重要事実(発行者の解散や資産状況の大きな変化など)を公表前に知り、それを利用して売買することが禁じられます。
2つ目は「暗号資産取引業者関係者」に対する規制です。取引所を運営する業者の関係者が、暗号資産の取扱開始や取扱中止といった重要事実を公表前に知って売買することが禁止されます。特定の暗号資産が大手取引所に上場するという情報は、それだけで価格を大きく動かす要因になります。
3つ目は「大量売買者関係者」への規制です。暗号資産の大量の売付けや買付けの実施またはその中止に関する事実を知った関係者が、公表前に売買することが禁じられます。
いずれも、株式のインサイダー取引規制の枠組みがベースになっています。上場企業の決算情報やM&A情報を事前に知って株を売買することが違法であるのと、同じ構造が暗号資産にも適用されることになったわけです。
「情報を教えること」も禁止
改正法は、関係者自身の売買だけでなく、未公表の重要事実を他人に伝えて取引させる行為も禁止しています。利益を得させる目的で重要事実を第三者に伝達したり、取引を勧めたりすることも違法です。
これは株式の世界では「情報伝達・取引推奨行為の禁止」と呼ばれ、2014年の金融商品取引法改正で導入されたルールです。同じ規制が、今回の改正で暗号資産にも適用されることになりました。
無登録業者には10年以下の拘禁刑
罰則も大幅に強化されました。
内閣総理大臣の登録を受けずに暗号資産取引業を行った場合の罰則は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方と規定されています。暗号資産に関する詐欺的な投資勧誘が後を絶たない実態への対応です。
また、風説の流布や相場操縦といった不公正取引に対して課徴金制度が整備されました。2019年の金商法改正で暗号資産にも不公正取引の禁止規定自体は設けられていましたが、課徴金や犯則調査権限がなく、違反行為に対する抑止力が不十分だと指摘されていました。
「決済手段」から「金融商品」へ 8年越しの転換
暗号資産を金融商品取引法の対象にするべきだという議論は、2018年にさかのぼります。約580,000,000円相当の暗号資産が流出したコインチェック事件などを受け、金融庁が検討を本格化させました。
2019年の改正ではデリバティブ取引への部分的な金商法適用にとどまりましたが、その後、米国でのビットコインETF承認やヨーロッパでのMiCA規制の整備など、国際的に暗号資産を投資商品として規制する流れが加速しました。
金融審議会の暗号資産制度に関するワーキング・グループが2025年12月に報告書を公表し、その方針を受けて2026年4月10日に改正法案が国会に提出されました。衆議院を6月11日に通過、参議院で7月15日に可決・成立し、7月23日の官報で公布に至っています。
施行日は今後政令で定められますが、2027年の施行が見込まれています。
【コラム】「公布」と「施行」の違い
法律が国会で可決・成立しても、すぐに効力を持つわけではありません。成立した法律は官報に掲載されることで「公布」されます。公布とは、法律の内容を国民に知らせる行為です。
一方、法律が実際に効力を持ち始めるのが「施行」です。今回の改正法の場合、「公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日」から施行されることになっています。事業者や取引所が新しいルールに対応する準備期間を設けるためです。
つまり、7月23日は暗号資産のインサイダー取引を禁止する法律が「国民に知らされた日」であり、実際にルールが適用されるのはもう少し先ということになります。
リファレンス
2026年7月23日 官報 号外第163号(内閣府)
金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料(金融庁・2026年4月)
第221回国会における金融庁関連法律案(金融庁)
※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。


