電気代の内訳の再エネ賦課金が月2842円になった 単価改定を知らないまま夏を迎えた40代夫婦の家計

再エネ賦課金は月2842円 転落家族のアイキャッチ 転落家族

※本記事は公的統計データに基づき、現代の家計事情をリアルに再現したシミュレーション・ストーリーです。

8月の朝、佐久間香織は郵便受けから電気の検針票を取って、台所のテーブルに置きました。夫の佐久間拓也が、冷蔵庫から麦茶を出しながらのぞき込みます。

「2万3800円」

「まあ、8月だしな」拓也はコップに注ぎました。「去年もそのくらいだったろう」

香織は去年の紙を引き出しから出して、並べました。使用量の欄は、去年が670kWh、今年が680kWhです。10kWhしか違いません。それなのに、請求額は去年より上がっていました。

紙の下のほうに、これまで一度も読んだことのない行がありました。再生可能エネルギー発電促進賦課金、2842円。

「これ、なに」

「知らない」拓也は麦茶を飲みました。「ずっとあったんじゃないのか」

単価は2026年度に1kWhあたり4.18円になりました

再生可能エネルギー発電促進賦課金は、太陽光や風力でつくった電気を電力会社が買い取る費用を、電気を使う人みんなで分け合って負担する仕組みです。負担する額は電気の使用量に比例します。単価は全国一律で、毎年度、経済産業大臣が決めます。

経済産業省の発表によると、2026年度の単価は1kWhあたり4.18円です。この単価は2026年5月の検針分から2027年4月の検針分まで使われます。

同じ発表では、1か月の電力使用量が400kWhの世帯をモデルにした負担額も示されています。月1672円、年2万64円です。この400kWhという数字は、総務省の家計調査にもとづく一般的な世帯の使用量とされています。

資源エネルギー庁が2025年度版のパンフレットで示していた同じモデルの負担額は、月1592円でした。同じ400kWhの世帯で比べると、月80円の差になります。

佐久間家の8月の使用量は680kWhです。単純に掛け算すると、この月の賦課金は2842円になります。

「月80円って書いてあるよ」香織は画面を見せました。

「うちは400じゃないだろ」拓也は検針票のほうを見ました。「680だ」

1か月では小さく 1年では見過ごせない額でした

香織が気になったのは、その月の増え方よりも、賦課金そのものの大きさでした。2842円という金額は、夏の1か月だけで見れば、家族4人の外食1回ぶんです。ただ、この行は毎月あります。

佐久間家の電気の使い方は、夏と冬に増えて、春と秋に落ちます。香織が去年1年分の検針票を並べて足すと、使用量は6300kWhでした。同じ使い方が続くとして単価を掛けると、賦課金だけで年に2万6334円になります。

「1年で2万6000円か」拓也は言いました。「それ、次男のスイミングの半年ぶんだぞ」

香織は返事をしませんでした。この春、正社員の話が出たときに、2人で長男の大学の費用を計算したことを思い出していたのです。そのときの紙には、電気代という行はあっても、その内訳はありませんでした。

知らないうちに払っていた、というのが正確ではないことは、香織にも分かっていました。検針票にはずっと書いてあったのです。読んでいなかっただけでした。

リアル家計簿:佐久間家(夫46歳・妻44歳・子2人)

収入

  • 夫の手取り(機械部品メーカーの生産管理):34万2000円
  • 妻の手取り(週4日の医療事務のパート):9万4000円
  • 収入合計:43万6000円

固定費

  • 住宅ローン(変動金利・返済22年目):10万8000円
  • 電気(8月分・使用量680kWh。うち再エネ賦課金2842円):2万3800円
  • ガス:5800円
  • 水道(2か月ごとの請求を月割り):6500円
  • 通信費(スマホ4台・光回線):2万1000円
  • 生命保険・医療保険(夫婦2人ぶん):2万4000円
  • 車1台(ローン・任意保険・駐車場):3万6000円
  • 長男の塾と模試の費用(高校1年・夏期講習を含む月):3万8000円
  • 次男の習い事(スイミング・そろばん):1万2000円
  • 固定費小計:27万5100円

変動費

  • 食費(4人・夏休みで昼食が増える月):8万4000円
  • 日用品:1万4000円
  • ガソリン:9000円
  • 医療費:6000円
  • 交際費とこづかい(夫婦2人ぶん):3万6000円
  • 変動費小計:14万9000円

特別費(年間支出の月割り)

  • 自動車税と車検とタイヤ交換(年間約11万円の月割り):9000円
  • 固定資産税(年間約13万2000円の月割り):1万1000円
  • 帰省と家族旅行と冠婚葬祭(年間約18万円の月割り):1万5000円
  • 家電の買い替えと住宅の修繕(年間約12万円の月割り):1万円
  • 特別費小計:4万5000円

貯蓄

  • 長男の学資の積立:2万円

支出合計:48万9100円
収支:−5万3100円(ボーナスで補填)

8月は、佐久間家にとって1年でいちばん重い月です。電気代と夏期講習と帰省が重なります。ふだんの月の赤字は1万円台に収まっていて、不足分は年2回のボーナスで埋めてきました。

「読まない行」が家計にいくつあるか

その晩、香織は明細をもう一度出しました。電気の紙のほかに、ガスの紙と、携帯電話の請求書と、保険の控えを並べます。

「合計しか見てなかった」香織は言いました。

「合計しか請求されないからな」拓也はテーブルの端に肘をつきました。

「そうなんだけど」香織は電気の紙をつまみ上げました。「この行だけで、1年に2万6000円だよ。こんなはずじゃなかった、って言えないよね。書いてあったんだから」

賦課金の単価は毎年度、経済産業大臣が決めます。家計の側から下げられるのは、使用量のほうだけです。エアコンを止める気はありませんでしたが、香織は次の月から、検針票を捨てずに封筒に入れて取っておくことにしました。

正社員の話は、まだ返事をしていません。長男の大学まで、あと2年半あります。

この回のまとめ

  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金の2026年度の単価は1kWhあたり4.18円で、2026年5月の検針分から2027年4月の検針分まで使われる
  • 1か月400kWhの世帯モデルでの負担額は月1672円、年2万64円。2025年度版の資料で示されていた同じモデルの月1592円と比べると月80円の差
  • 単価は全国一律で、負担額は使用量に比例する。家計の側で動かせるのは使用量だけ
  • 8月に680kWh使った佐久間家では、この月の賦課金は2842円。同じ使い方が1年続くと、年2万6334円になる

経済産業省 再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します

資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー FIT・FIP制度の概要

資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2025年度版 3.経済性

※本連載はフィクションです。制作体制については編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。

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