2019年組 変動金利1.225%が固定1.11%を上回っても 返済額は月6754円少ない

2019年組の住宅ローン。変動1.225%が固定1.11%を上回っても、毎月返済額は変動が6754円少ない 隣の住宅ローン

※本記事は実在の金利データにもとづき、家計への影響をリアルに再現したシミュレーション・ストーリーです。登場する世帯・人物は架空です。

2019年10月。一定の要件を満たす住宅取得では、住宅ローン控除の控除期間が13年に延びる特例の対象期間が始まった月です。

その月、同じ分譲地で同じ3600万円を35年ローンで借りた2つの家族がいました。編集部設定では、どちらも共働きで世帯年収は約720万円、夫婦と3歳の子ども1人の3人家族です。古賀俊介(35歳)と美咲(33歳)は全期間固定、宮原健太(35歳)と麻衣(33歳)は変動金利を選びます。

それから6年10か月。2026年8月の編集部試算では、宮原家の適用金利は年1.225%。古賀家が契約した固定金利の年1.11%を上回っています。

ところが、毎月の返済額は古賀家が10万3479円、宮原家が9万6725円。金利は変動側のほうが高くなったのに、返済額は6754円少なくなっています。

分かれ道の日

2019年10月、モデルルームから帰った夜。古賀家のテーブルには、固定と変動の返済試算が並んでいました。

「金利が少し高くても、教育費がかかる時期に返済額が読めるほうが安心できるよね」

古賀家が選んだのは、当時の【フラット35】の最低金利である年1.11%。借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きという条件です。

隣の宮原家は、変動金利を選びました。

「低い金利のうちに元本を多く減らせるなら、その差は大きいと思う」

編集部のモデルでは、三井住友銀行が公表する2019年10月の変動金利型の金利水準2.475%を基準に、優遇幅を1.90ポイントで全期間固定したと仮定します。借入時の適用金利は年0.575%です。この優遇幅は実在の契約を再現した数字ではなく、固定と変動を比較するための編集部設定です。

住宅価格4200万円、頭金600万円、借入額3600万円、35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、繰り上げ返済なし。違うのは金利タイプだけです。

6年10か月後の隣人たち

2026年8月。宮原家が返済予定を確認していると、変動の適用金利が年1.225%まで上がっていました。

「もう古賀さんの1.11%より高いんだ」

「でも、毎月の返済額そのものはまだうちのほうが少ないんだね」

ここが、住宅ローンの金利を比べるときに少し分かりにくいところです。今月の金利だけを見ても、それまでに元本をどれだけ減らしてきたか、返済額がいつ見直されたかまでは分かりません。

三井住友銀行の変動金利型(元利均等返済)では、毎月の返済額は5年ごとに見直されます。

返済の記録

返済の記録。2026年8月の毎月返済額の内訳。古賀家(年1.11%固定)は10万3479円、宮原家(年1.225%変動)は9万6725円で、変動が6754円少ない

2019年11月から2026年8月までの82回を月ごとに計算すると、2026年8月時点の残高は古賀家が3002万4279円、宮原家が2966万3913円です。宮原家のほうが36万366円少なくなっています。

82回で支払った返済額の累計は、古賀家が848万5278円、宮原家が780万2738円。差は68万2540円です。

ただし、2026年8月の1回だけを見ると流れは変わっています。古賀家は返済額10万3479円のうち利息が2万7842円、元本返済が7万5637円。宮原家は返済額9万6725円のうち利息が3万349円、元本返済が6万6376円です。

この月は変動側のほうが利息を2507円多く払い、元本の減りは9261円小さくなりました。

金利が逆転しても、返済額が同時に逆転しない理由

理由は大きく2つあります。

1つ目は、宮原家が低い金利で返していた期間が長かったことです。編集部モデルでは、借入時の年0.575%が2024年12月まで続きます。その間は古賀家より利息が少なく、元本を早く減らせました。

2つ目は、元利均等返済の変動金利にある「返済額5年間一定ルール」です。三井住友銀行は、5回目の10月1日を基準とする利率変更までは、途中で利率が変わっても返済額を一定とし、5年ごとの見直し時にも新しい返済額をそれまでの125%以内とする仕組みを説明しています。

三井住友銀行は、変動金利の融資後の利率を年2回、4月1日と10月1日に見直し、それぞれ6月・12月の返済日の翌日から新金利を適用するとしています。この仕組みに合わせ、編集部モデルでは宮原家の適用金利を2025年1月から0.725%、2025年7月から0.975%、2026年7月から1.225%としました。

返済額は当初の9万4649円から、5回目の10月1日を経た後の2025年1月に9万6725円へ見直すモデルです。増加は2076円で、125%の上限には達しません。

その後に適用金利が上がっても、次の返済額見直しまでは毎月返済額そのものを9万6725円で据え置きます。その代わり、返済額の中で利息が占める割合が増え、元本の減りが遅くなります。

つまり、「変動の適用金利が固定の契約金利を上回った」ことと、「変動の毎月返済額が固定を上回った」ことは同じではありません。

2019年10月組には税制上の節目もあった

国税庁によると、2019年10月1日から2020年12月31日までに居住し、住宅の取得等が「特別特定取得」に該当する場合など、要件を満たせば住宅ローン控除の控除期間は13年です。同じ案内の表では、1年目から10年目は年末残高等の1%を基に計算し、控除限度額は40万円とされています。

ただし、実際に控除できる税額は所得税額などによって異なります。本記事では、住宅ローン控除による実際の受取額を固定・変動の比較には加えていません。主比較は、あくまで毎月のローン返済額です。

試算条件

  • 借入:2019年10月1日より後に借入を実行した編集部設定。初回返済は2019年11月
  • 世帯:2世帯とも共働き、世帯年収約720万円、夫婦と3歳の子ども1人
  • 住宅価格:4200万円、頭金600万円、借入額3600万円
  • 返済期間:35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、繰り上げ返済なし
  • 固定側:2019年10月の【フラット35】最低金利 年1.11%。借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付き
  • 団信:固定側の年1.11%は新機構団信付きの借入金利。変動側は三井住友銀行の通常の団体信用生命保険を想定し、保険料は銀行負担。疾病保障などの金利上乗せ特約は比較に含めない
  • 変動側:三井住友銀行公表の変動金利型の金利水準を基準に、優遇幅1.90ポイントを全期間固定する編集部設定
  • 変動側の適用金利:年0.575%で開始。年2回の金利見直しと適用時期に合わせ、2025年1月から0.725%、2025年7月から0.975%、2026年7月から1.225%とする編集部モデル
  • 変動側の返済額:当初9万4649円。5回目の10月1日を基準とする見直しを反映し、2025年1月から9万6725円。以後、次の5年見直しまでは据え置くモデル
  • 比較軸:主比較は毎月のローン返済額。残高、累計返済額、当月の利息と元本内訳は補助指標
  • 端数処理:毎月の利息は1円未満切り捨て、毎月返済額は四捨五入
  • 比較に含めないもの:手数料、保証料、火災保険料、繰り上げ返済、住宅ローン控除の実受取額

まとめ

2019年10月組の編集部モデルでは、2026年8月に変動の適用金利が固定の契約金利を上回っても、毎月返済額は変動側のほうが6754円少ない結果になりました。

一方で、2026年8月だけを見れば、変動側は固定側より利息が2507円多く、元本返済は9261円少なくなっています。これまでの低金利期に積み上げた差があるため、残高や累計返済額はまだ変動側が小さいものの、この差が今後も同じ方向に広がるとは限りません。

固定と変動の答え合わせは、「今の金利がどちらより高いか」だけでは決まりません。借りた時期、これまでの金利、残高、返済額の見直し時期を一緒に見ると、自分のローンの現在地が見えやすくなります。

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※本連載はフィクションです。制作体制については編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。

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