2026年8月4日の官報に、国土交通省告示第1024号が載りました。兵庫県内の2つの川の周辺の土地を、砂防法第2条にもとづく土地に指定する、という短い告示です。ところが中身を読むと、同じ1本の告示のなかで、2つの区域がまったく違う書き方で囲まれていました。
| 河川 | 区域の囲み方 | 位置の示し方 |
|---|---|---|
| 夏栗谷川(豊岡市) | 標柱1号から19号 | 標柱がある土地の地番 |
| 大戈川(朝来市) | 座標1点から29点 | 北緯と東経(秒の小数第4位まで) |
片方は、現地の標柱を結んで囲む
1つ目は、兵庫県豊岡市日高町夏栗を流れる夏栗谷川です。告示は、この一帯にある標柱1号から19号までを順番に結んだ線と、1号と19号を結んだ線で囲まれた土地を指定する、と書いています。標柱とは、区域の境目を示すために現地に設置される標識のことです。
どの標柱がどこにあるのかは、地番で示されています。字見田685番に1号と2号、地先道路敷715番に3号、714番に7号、709番に8号、691番に10号、690番に11号、といった具合です。つまりこちらの区域は、現地に立つ標柱の位置を、地番と番号で示す形で線が引かれています。
もう片方は、秒の下4桁まで書いた座標で囲む
2つ目は、兵庫県朝来市多々良木にある大戈川です。こちらには標柱が出てきません。代わりに、北緯と東経の組み合わせが29点ぶん並んでいます。
たとえば1点目は、北緯35度14分30.4272秒、東経134度49分07.1233秒。秒の値が小数第4位まで書かれています。緯度の1秒をおよそ31メートルとすると、小数第4位の1刻みはおおよそ3ミリメートルにあたります。これは座標の書き方の細かさであって、測量の精度がその単位だという意味ではありません。それでも、山あいの区域の境目を、指1本分よりも細かい刻みで書き表していることになります。
もうひとつ興味深いのは、29点のすべてを直線で結んでいるわけではない点です。告示は、4点と5点の間だけは、2017年(平成29年)の国土交通省告示第869号で指定済みの土地の境界線に沿って結ぶ、としています。過去に指定した区域の縁に、新しい区域をぴたりと継ぎ足している格好です。
指定されると、その土地では何が変わるのか
ここで指定された土地は、一般に砂防指定地と呼ばれます。国土交通省の説明によれば、砂防指定地は、砂防設備を必要とする土地、または治水のうえで一定の行為を禁止したり制限したりすべき土地として、国土交通大臣が指定する区域です。土砂が大量に出たり流れ下ったりしやすい渓流や、風水害や地震のあとに土砂がたまっている区域などが対象になります。
指定されると、竹木の伐採や土石・砂礫の採取など、治水上砂防のために支障のある行為が制限されます。この禁止と制限は、砂防法第4条が都道府県知事の権限として定めているものです。制限される行為の中身は都道府県の条例などで定められており、指定地のなかでこうした行為をしたい場合は、知事の許可が必要になります。指定地の監視や砂防設備の管理そのものは、同法第5条により都道府県知事が担います。
制限を受ける側への手当てもあります。砂防指定地のうち山林については、土地の使い方に制限がかかることを理由に、固定資産評価額を2分の1を限度として減額することとされています。ただし、その土地の面積が特定できない場合は対象外です。
129年前の法律が、いまも線を引いている
この指定の根拠になっている砂防法は、1897年(明治30年)3月30日に公布された法律第29号です。今回の告示も、その第2条にもとづいて指定を行い、同じ年にできた砂防法施行規程(1897年10月26日勅令第382号)第1条にもとづいて告示する、という形をとっています。
現地に立てた標柱で境目を示すやり方と、緯度と経度の数値で境目を示すやり方。今回の告示には、その2つが並んで載っています。129年前の枠組みが、その両方をそのまま受け止めている。今回の告示は、その断面がたまたま1枚の紙の上に並んだものだといえます。
【コラム】自分の家の近くが指定地かどうかを調べるには
砂防指定地の場所と範囲は、国土交通省が公開している「国土数値情報」で地図として確認できるほか、各都道府県の砂防担当課に問い合わせて調べることもできます。指定地では、条例などで定められた行為をするときに、知事の許可が必要になります。対象になる行為は都道府県によって異なるため、気になる土地があるときは、その土地がある都道府県の砂防主管課に問い合わせるのが確実です。
まとめ
- 2026年8月4日の官報に、兵庫県の2つの川の周辺を砂防法第2条の土地に指定する告示が載った
- 豊岡市の夏栗谷川は標柱19本を結んだ線、朝来市の大戈川は秒の下4桁まで示した座標29点で区域を囲んでいる
- 指定されると竹木の伐採や土石の採取などが制限され、行うには都道府県知事の許可が必要になる
- 山林は固定資産評価額が2分の1を限度に減額される
- 根拠となる砂防法は1897年に公布された法律で、いまも指定の根拠として使われている
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