アメリカの住宅街の朝。家の前に出しておいた大きなごみ用カートを、「WM」のロゴを付けたトラックが次々と回収していきます。新連載「あなたの知らないS&P500」の第1回は、そのトラックの持ち主、ウェイスト・マネジメント(Waste Management, Inc.、ティッカー:WM)です。日本ではほとんど知られていませんが、アメリカでは「ごみといえばこの会社」。そしてなぜか、ゴルフファンにもおなじみの名前です。
この連載は、アメリカの代表的な株価指数S&P500を構成する500社を、1社ずつ紹介していく企画です。インデックス投信で「S&P500を買っている」人は多くても、その中身を1社ずつ知っている人はほとんどいません。データではなく「へえ」と言える話を集めながら、500社を完走します。
ごみ収集の会社が、株価指数の常連です
日本では、家庭から出るごみの収集は基本的に市区町村の仕事です。ところがアメリカでは、この分野を民間企業が広く担っており、その最大手がウェイスト・マネジメントです。年次報告書(2025年12月期)では、自社を「北米最大手の総合環境ソリューション企業」と位置づけ、アメリカとカナダの全域でごみの収集・運搬・埋立・リサイクルを手がけていると説明しています。
規模は桁違いです。2025年12月期の売上高は252億ドル。従業員は約6万500人。大会公式サイトに載る同社の紹介文によれば、顧客の数は2000万件を超えます。ごみを扱うだけで、これだけの経済圏ができあがっているのです。
何をしている会社か:ごみの一生を丸ごとカバー
収集トラックが集めたごみは、全米342か所の中継施設で集約され、同社が保有・運営する257か所の埋立地へ運ばれます。この埋立地のネットワークは、アメリカ・カナダで最大です。リサイクルも主力事業のひとつで、紙・段ボール・ガラス・プラスチック・金属を扱う北米有数のリサイクル企業でもあり、2025年には最新の選別技術を備えたリサイクル施設を新たに8か所開設しました。
強み:ごみを「燃料」に変える
おもしろいのはここからです。埋立地では、ごみが分解される過程でガスが発生します。ウェイスト・マネジメントはこのガスを回収して発電し、さらに「再生可能天然ガス(RNG)」として精製して、自社の天然ガストラックの燃料に充てています。ごみを集めたトラックが、そのごみから生まれた燃料で走る。年次報告書は、この埋立地ガス発電の分野でも自社を北米の代表的な事業者だと説明しています。
2024年11月には医療廃棄物大手のステリサイクルを買収し、病院などから出る規制廃棄物の処理や機密文書の破砕処理まで、カバー領域を広げました。もうひとつ、経営の安定を示す数字があります。2025年の売上のうち、最大の顧客が占める割合は5%未満。特定の大口に頼らず、無数の家庭と事業者から少しずつ収入を得る構造です。景気が良くても悪くても、ごみは毎日出ます。
日本との関係:ありません(それがこの連載です)
2025年12月期の年次報告書で確認できる従業員の所在地は、アメリカ・カナダ・西欧・インドで、日本の記載はありません。日本語の公式サイトも、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。日本で暮らしていて、この会社の商品やサービスに触れる機会は、まずないでしょう。
それでも、S&P500を通じてこの会社に投資している日本人は大勢います。インデックス投信を積み立てていれば、あなたの資産の一部は、アメリカのごみ収集トラックの上に乗っています。「知らないのに持っている」。この連載が始まった理由そのものの1社です。
アメリカ人にとっては:ゴルフの祭典の、あの「WM」
アメリカでこの会社の名前をひときわ有名にしているのが、ゴルフです。毎年2月にアリゾナ州で開かれるPGAツアーの「WMフェニックスオープン」は、2010年からウェイスト・マネジメントが冠スポンサーを務める大会で、契約は2030年まで延長されています。
この大会、ただのトーナメントではありません。大会公式サイトは「ゴルフ界で最大かつ最も熱狂的な観客」を集める大会だと紹介し、愛称は「ピープルズ・オープン(みんなのオープン)」。観客席にぐるりと囲まれた16番ホールは「ゴルフで一番うるさいホール」として知られ、静粛がマナーというゴルフの常識を毎年ひっくり返しています。大会週の来場者は70万人を超えます。
そしてここに、ごみ会社ならではの仕掛けがあります。2013年からこの大会は「ゼロウェイスト」で運営されており、会場で出るごみのほぼすべてがリサイクル・堆肥化・寄付などに回され、埋立地には送られません。ごみ処理の最大手が、ごみを出さない巨大イベントを毎年実演してみせる。これ以上ない自社広告です。大会の慈善部門であるサンダーバーズ・チャリティーズは、これまでに2億4600万ドル超を地域の慈善事業に配分してきました。
トリビア:ごみからブロックバスターへ
創業者の1人、ウェイン・ヒュイゼンガの人生は、アメリカ経済史でも指折りの立身出世です。AP通信などによると、ヒュイゼンガは1968年にごみ収集トラックからスタートし、小さな収集業者を次々と買収して、1972年の株式公開までにその数は133社。1983年には、ウェイスト・マネジメントを全米最大のごみ処理会社に育て上げました。
その後の展開が規格外です。今度はレンタルビデオのブロックバスターを全米チェーンに急成長させ、さらに中古車販売のオートネーションも大企業にしました。自動車殿堂は彼を、生涯で3社のフォーチュン500企業を立ち上げた最初の起業家だと紹介しています。なお、ブロックバスターは彼の創業ではなく、1987年に出資して経営権を得た会社です。加えて、NFLのマイアミ・ドルフィンズ、MLBのフロリダ・マーリンズ、NHLのフロリダ・パンサーズと、プロスポーツ3チームのオーナーにもなりました。ごみで築いた財産が、フロリダに野球とホッケーを連れてきたのです。2018年に80歳で亡くなりました。
明日の雑談にどうぞ。「アメリカのごみ収集最大手を育てた人は、レンタルビデオのブロックバスターも育てた人」です。
まとめ
「ごみ」という、派手さから最も縁遠い商売が、S&P500の一角を静かに占めている。ウェイスト・マネジメントは、この連載が探していきたい「知らないのにすごい会社」の見本のような1社目でした。
これであなたは、500社のうち1社を知りました。
リファレンス
Waste Management, Inc. Form 10-K(2025年12月期・SEC EDGAR)
SEC EDGAR XBRL(売上高データ)
WMフェニックスオープン公式サイト「About WM」
Automotive Hall of Fame「H. Wayne Huizenga」
WMフェニックスオープン公式サイト
ステート・ストリート SPDR S&P500 ETF 保有銘柄一覧(2026年7月31日時点)
※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。


