土日祝は行政機関の休日にあたるため、官報は発行されません。そこで休日のオアシス新聞は、平日に出た号外のなかから、その日の紙面ではご紹介しきれなかった話題を選りすぐってお届けします。
今回取り上げるのは、2026年7月24日の号外に載った種苗法の改正です。イチゴやブドウの新しい品種を開発した人には「育成者権」という権利が認められています。これまでこの権利は、種や苗を売る行為には及ぶ一方で、貸す行為は条文に書かれていませんでした。今回の改正で、その空白が埋まります。
「貸す」が権利の対象に加わる
種苗法は、育成者権が及ぶ「利用」にあたる行為を条文で列挙しています。種苗については、生産、調整、譲渡の申出、譲渡、輸出、輸入、そしてこれらの目的での保管が並んでいました。改正後はここに「貸渡しの申出」と「貸し渡し」が加わります。
つまり、登録品種の苗を業として貸し出すには、育成者権を持つ人の許諾が必要になります。売っていないから関係ない、とは言えなくなるということです。
貸す側にも表示の義務がつく
貸渡しが利用の一類型になったことで、これまで売る側に課されていた表示の義務も、貸す側に広がります。
登録品種の種苗を業として貸し渡す人、貸渡しのための展示や広告を業として行う人は、その種苗が品種登録されている旨の表示を付けなければなりません。海外への持ち出しや栽培地域に制限が付いている品種では、制限がある旨と、その内容が公示されている旨の表示も必要です。
品種の名称についても同じで、貸渡しの申出や貸渡しの際には登録品種の名称を使わなければならず、逆に、同じ植物の種類に属する別の品種にその名称を使うことは禁じられます。この名称に関する義務に違反したときの過料は、上限が100,000円から200,000円に引き上げられました。
登録品種ではないのに登録品種であるかのような表示を付けて貸し渡す行為も、あわせて禁止されます。
権利の期間は35年に 樹木は40年
もうひとつの柱が、権利が続く期間の延長です。育成者権の存続期間は、品種登録の日から25年、樹木など木本の植物は30年とされてきましたが、これがそれぞれ35年、40年になりました。
この延長は公布の日から施行されています。すでに登録されている品種にも適用されますが、公布の日の時点ですでに期間が満了していた権利は対象になりません。
権利が続く期間が延びれば、毎年の登録料を納める期間も延びます。同じ日の官報には農林水産省令も載っていて、登録料の表の区分が「第10年から第30年まで」から「第10年から第40年まで」へと書き換えられました。金額そのものは第1年から第9年までが毎年4,500円、第10年以降が毎年30,000円で、従来と変わりません。
オアシス新聞では以前、この登録料を納め忘れたために品種登録が取り消された事例をお伝えしました(花の品種にも更新料がある 払わなければ権利は10か月前にさかのぼって消える)。権利が長持ちするようになった分、払い続ける年数も長くなります。
登録の前でも輸出を止められる
品種登録は、出願してから登録されるまでに時間がかかります。その間に種苗や収穫物を海外へ持ち出されると、登録された頃には手遅れということが起こり得ます。
改正では、出願が公表されたあと、出願品種の内容を記した書面を示して警告した場合に、警告のあと登録までの間の輸出をやめるよう請求できる規定が新設されました。対象は種苗の輸出と、最終消費以外の目的での収穫物の輸出で、回復が困難な損害が生じる、または生じるおそれがあることが条件です。輸出のために用意された種苗や収穫物の廃棄を求めることもできます。
出願の審査を早める仕組みも入りました。出願中の品種を出願者でない人が業として利用していると認められる場合など、政令で定める場合には、ほかの出願より先に審査できます。
名前を使えば「その品種の種苗」と推定される
権利を侵害されたと訴える側にとって、目の前にある苗が本当に登録品種のものかを証明するのは簡単ではありません。改正では、登録品種の名称を使って業として種苗の譲渡や貸渡しをした場合、その種苗は当該登録品種の種苗であると推定する規定が加わりました。
損害賠償の計算方法も見直されます。これまでは、権利者自身が生産・販売できる能力を超える分については賠償額に反映しにくい面がありましたが、改正後はその超過分についても、利用に対して受けるべき金銭に相当する額を損害額に加えられるようになります。裁判所がその金額を認定する際、侵害があったことを前提に当事者が合意したとしたら得られたであろう対価を考慮できることも、条文に明記されました。
さらに、育成者権の侵害をめぐる裁判では、裁判所が広く一般に意見の提出を求められる規定も新設されています。特許の裁判などで使われている第三者意見募集と同じ仕組みです。
施行はいつか
存続期間の延長は、公布の日である2026年7月24日から効力を持っています。貸渡しに関する規定をはじめとするそのほかの改正は、2026年12月1日からの施行です。
苗のレンタルは、観葉植物のリースや花壇の植え替えサービスなど、身近な場面でも行われています。年内に、貸す側は自分が扱っている品種が登録品種かどうかを確かめておく必要がありそうです。
【コラム】登録品種と一般品種
流通している品種は、大きく「登録品種」と「一般品種」に分かれます。登録品種は種苗法にもとづいて品種登録を受けたもので、育成者権が働きます。一般品種は、在来種、これまで品種登録されたことのない品種、そして育成者権の期間が満了した品種です。今回の期間の延長は、これまで25年で一般品種の仲間入りをしていた品種が、35年のあいだ登録品種のままでいることを意味します。
リファレンス
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