故事成語の処方箋

読み物(しおり堂の処方箋)

鶏口牛後「その肩書き、あなたを守ってはくれません」

金曜の夜、駅前の飲み会を早めに切り上げた男が、傘も差さずに小走りで一軒の古書店に駆け込んできた。「濡れてしまいましたね」と栞さんは声をかけた。男はハンカチで肩を拭きながら、「すみません、雨宿りです」と少し照れたように言った。名刺入れの角がジ...
読み物(しおり堂の処方箋)

守株「その切り株は、もう兎を呼びません」

雨上がりの夕方、一人の女が店に入ってきた。傘立てに置いた折り畳み傘から、まだ水が滴っていた。「濡れましたね」と栞さんは声をかけた。女は少し驚いた顔をしてから、「あ、はい」と小さく答えた。「駅からここまでで、また降られてしまって」「何かお探し...
読み物(しおり堂の処方箋)

五十歩百歩「その差を測っているのは、あなただけです」

雨上がりの匂いがまだ残る夕方、一人の女性が「しおり堂」の前で足を止めた。看板もなく、営業時間の表示もない。それでも吸い込まれるように扉を押した。「いらっしゃいませ」と栞さんが顔を上げた。女性は会釈だけして、文庫本の棚の前に立った。手に取って...
読み物(しおり堂の処方箋)

捲土重来「負けたままでは、終わりません」

雨は降っていなかった。晴れてもいなかった。灰色の空の下、店をたたんだ翌朝、その男はふらりと歩いていて、気づけばしおり堂の扉の前に立っていた。「いらっしゃいませ」栞さんは顔を上げずに言った。男は返事をしなかった。棚のあいだを、あてもなく歩いた...
読み物(しおり堂の処方箋)

温故知新「古いものは、置いていかれた人の味方です」

変化の速い時代に置いていかれる不安を抱える女性が、古書店「しおり堂」で出会った故事成語「温故知新」。新しいものは、古いものの上にしか立てない──積み上げてきたものの価値に気づかせてくれる物語。
読み物(しおり堂の処方箋)

他山の石「その話、まだ自分のことだと思っていませんね」

他人の失敗談を「自分には関係ない」と聞き流してしまう男性が、古書店「しおり堂」で出会った故事成語「他山の石」。よその山の石でも、自分の玉を磨ける──気づきを促す物語。
読み物(しおり堂の処方箋)

塞翁が失馬「その不幸は、まだ結末ではありません」

転職を後悔する女性が古書店「しおり堂」で出会った故事成語「塞翁が失馬」。福と禍は同じ扉から出入りする──今の不幸が結末ではないと気づかせてくれる物語。