迷惑メールの「スパム」はこの缶詰が語源 沖縄の食卓を支えるホーメル・フーズ【あなたの知らないS&P500】

迷惑メールのスパムの語源になった缶詰を作るホーメル・フーズを紹介するアイキャッチ画像 あなたの知らないS&P500

受信トレイを開くと、頼んでもいない広告メールが並んでいます。あれを「スパムメール」と呼ぶようになった出発点は、アメリカのミネソタ州で1937年に発売された豚肉の缶詰でした。そしてその缶詰は、日本でも沖縄のスーパーの棚に当たり前のように並んでいます。

作っているのはホーメル・フーズ(Hormel Foods Corporation、ティッカー:HRL)。S&P500に名を連ねる、売上高121億ドル規模の食品会社です。

COMPANY FILE ── 500分の4社目

社名ホーメル・フーズ(Hormel Foods Corporation)
ティッカーHRL(ニューヨーク証券取引所)
本社ミネソタ州オースティン
創業1891年
業種食品(食肉加工・缶詰・ナッツなどのブランド食品)
日本法人なし(沖縄ホーメルとの合弁に少数出資)
公式サイトhormelfoods.com(英語)
日本語サイトspam-jp.com(スパムブランドの日本語サイト)

何をしている会社か:ミネソタの精肉業から始まった

ホーメル・フーズは1891年、ジョージ・A・ホーメルがミネソタ州オースティンで創業しました。当時の社名はGeo. A. Hormel & Company。年次報告書(Form 10-K)によれば、食肉と食品の加工業として始まった事業を今も本業として続けており、買収と自前の商品開発でブランドを増やしてきた会社です。

2025年10月26日に終えた2025年度の売上高は121億616万ドル。従業員は約2万人で、その9割超がアメリカ国内で働いています。事業は、スーパーなどに売る小売、レストランや学校給食などに売る外食向け、そして海外向けの3つに分かれます。売上の内訳は小売が約75億ドル、外食向けが約39億ドル、海外向けが約7億ドルで、稼ぎの大半はアメリカ国内です。

代表商品:缶詰だけの会社ではない

日本で名前が通っているのは、やはりポークランチョンミートのスパム(SPAM)でしょう。日本語の公式サイトは、原材料を豚肉・食塩・砂糖・加工デンプン・発色剤の5種類と説明しています。加熱して缶詰にしてあるので、開けてそのままでも食べられます。

ただしホーメル・フーズは缶詰専業ではありません。ピーナッツバターのスキッピー(SKIPPY)、ナッツのプランターズ(PLANTERS)、七面鳥のジェニオ(JENNIE-O)、抗生物質を使わない食肉のアップルゲイト(APPLEGATE)など、30を超えるブランドを抱えています。缶詰そのものも得意分野で、公式の沿革によれば、世界で初めて缶詰のハムを作ったのは1926年のこの会社でした。

SPAMの累計生産缶数を示した図。1959年に10億缶、2012年に80億缶に達したことを横棒で表している

スパムの累計生産缶数は、公式年表で節目の年だけが公表されています。1959年に10億缶、1970年に20億缶、そして2012年に80億缶。80年近く売れ続けている缶詰であることが、この数字の並びから見えてきます。

強み:ブランドを長く持ち続ける

この会社の特徴は、いったん手に入れたブランドを長く育てるところにあります。スパムは1937年から、ピーナッツバターやナッツのブランドも買収後に主力として残り、年次報告書では商標について「使い続けるかぎり更新は無期限に可能」と説明されています。流行に合わせて商品を入れ替えるのではなく、看板を守りながら味やサイズの種類を足していく作り方です。

その安定ぶりを端的に示すのが配当です。年次報告書によれば、ホーメル・フーズは389四半期にわたって連続で配当を払い続けています。単純に四半期を年に直すと97年分にあたります。同社はS&P500の構成企業であるとともに、増配を長く続けた企業を集めたS&P500配当貴族指数(S&P 500 Dividend Aristocrats)にも採用されています。

日本との関係:沖縄の食卓に60年以上

日本でスパムやコンビーフハッシュを作って売っているのは、沖縄県中頭郡中城村に本社を置く株式会社沖縄ホーメルです。同社の会社概要によれば、創業は1959年7月23日。当初は加工食品の輸入と販売が中心で、1966年に自社工場の操業を始めました。資本金は3億500万円で、ホーメル・フーズおよびホーメル・フーズ・インターナショナルと資本・技術提携を結んでいます。

一方、ホーメル・フーズの公式サイトは沖縄ホーメルについて「1969年に設立された、同社で最も長く続く合弁事業」と説明し、自社の出資は少数にとどまるとしています。日本での製造・輸入・販売を担っているのは、あくまで沖縄の会社ということです。

沖縄ホーメルの商品一覧を眺めると、スパムやコンビーフハッシュのほかに、タコライスの缶詰、ポルトギューソーセージ、なかみ汁、てびち汁、軟骨ソーキの煮付けが並びます。アメリカ生まれの缶詰と沖縄の家庭料理が同じ工場から出荷されている光景は、この会社ならではのものです。なお日本での一番人気の食べ方について、スパムの日本語公式サイトは、ご飯と海苔を合わせた「スパムむすび」を挙げています。

日本で買えるこの会社の商品

スパム 減塩 6缶

沖縄ホーメルが製造する、塩分をおさえたタイプ。スパムむすびにも、そのまま焼いても使えます。

Amazonで見る

※Amazonのアソシエイトとして、オアシス新聞は適格販売により収入を得ています。

アメリカ人にとっては:ハワイでは年に700万缶

アメリカ本土よりも熱心なのがハワイです。公式サイトのよくある質問によれば、ハワイ州だけで年に700万缶が売れ、スーパーの総菜売り場から高級店まで幅広く使われています。マクドナルドの朝食メニューにスパムを使った商品が並ぶことも、同社は紹介しています。グアムでは1人あたり年16缶という計算になり、フィリピンではスパムの料理だけを出すレストランが生まれました。東南アジアでは、贈答用の詰め合わせが結婚祝いとして通用するとも書かれています。

宣伝の歴史も独特です。1947年には「ホーメル・ガールズ」という60人編成の楽団がアメリカ各地を回り、スパムやホーメル製品の知名度を広げました。1991年には創業100年を記念してスパムの博物館が開館し、2016年からはオースティンの中心部で入場無料の施設として運営されています。

トリビア:名付け親は副社長の兄、賞金は100ドル

スパムという名前は公募で決まりました。公式年表によれば、当時の副社長の兄にあたるケン・デニョーが命名者で、賞金は100ドル。ただし名前の由来については、公式サイトのよくある質問が「スパイスの効いたハムの略という説が有名だが、本当の答えを知っているのは当時の一部の元幹部だけ」と書いており、会社自身が答えを明かしていません。

そして雑談で使える一言がこれです。迷惑メールを「スパム」と呼ぶ理由は、インターネットの技術文書に書かれています。1999年に公開されたRFC 2635という文書は、この語がイギリスのコント番組の一場面に由来すると説明しています。番組のなかで、食堂のメニューがすべてスパムに埋め尽くされていく様子が、大量の広告メールに受信箱が埋まる状況とよく似ていたためです。同じ文書は脚注で、大文字のSPAMはホーメルの食品の名前であり、小文字のspamが迷惑メールを指すと、わざわざ書き分けています。

その番組にスパムが登場したのは1970年のこと。公式年表は同じ年に累計20億缶を達成したことも記録しています。缶詰の名前がコントを経て、インターネットの技術文書に迷惑メールの呼び名として書き留められるまでには、単純に数えて29年が流れたことになります。

これであなたは、500社のうち4社を知りました。

沖縄のスーパーで缶詰を手に取るとき、あるいは迷惑メールを消すとき、その背後には売上121億ドルの食品会社がいます。S&P500のインデックス投信を積み立てている人は、この会社の株主でもあります。

参考リンク

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