保険料率は下がったはずなのに――40歳の誕生月に始まった「介護保険料」で手取りが減った40代夫婦の家計

保険料率は下がったのに――40歳の誕生月に増えた介護保険料 読み物(転落家族)

※本記事は公的統計データに基づき、現代の家計事情をリアルに再現したシミュレーション・ストーリーです。

佐々木亮太さん(仮名・40歳)は、都内のIT企業に勤める会社員だ。妻の久美子さん(38歳)はパートで働き、小学6年の長女と小学3年の長男がいる。2026年7月、亮太さんは40歳の誕生日を迎えた。ケーキも、プレゼントもいつも通りだった。変わったのは、その1か月後に届いた給与明細のほうだった。

健康保険料は、たしかに下がっていた

2026年度(令和8年度)、協会けんぽの都道府県単位保険料率は、多くの都道府県で引き下げられた。東京都の場合、令和7年度の9.91%から令和8年度は9.85%へと下がっている。この改定は令和8年3月分(4月納付分)から適用されている。

亮太さんも春先、給与明細の控除額がわずかに減っているのに気づいてはいた。「今年は保険料が下がったらしい」。その程度の認識で、深く気にとめてはいなかった。

40歳の誕生月に加わった、もうひとつの項目

介護保険には「第2号被保険者」という区分があり、40歳から64歳までの健康保険加入者が対象になる。資格を取得するのは「40歳の誕生日の前日」が属する月からで、会社勤めの人の場合、実際の給与天引きはその翌月分の給与から反映される。

亮太さんの誕生日は7月2日。その前日にあたる7月1日が資格取得日となり、7月分から介護保険料の徴収が始まった。給与が翌月控除の会社だったため、明細に反映されたのは8月分の給与からだった。

さらに、令和8年4月分(5月納付分)からは、全国一律で「子ども・子育て支援金」(0.23%)も加わっている。これは40歳未満・以上を問わず、協会けんぽ加入者全体が対象の制度で、亮太さんの明細にはすでに5月分から少しずつ上乗せされていた。ただし金額が小さかったこともあり、亮太さんはこちらにはまったく気づいていなかった。

標準報酬月額36万円の亮太さんの場合、本人負担分(労使折半後)を単純に試算すると、次のようになる。

  • 令和7年度(39歳・介護保険料なし):健康保険料率9.91% → 本人負担 約17,838円/月
  • 令和8年度(40歳到達後):健康保険料率9.85%(約17,730円)+介護保険料率1.62%(約2,916円)+子ども・子育て支援金0.23%(約414円)= 約21,060円/月

差額は、月あたり約3,222円の増加になる。健康保険料そのものは下がったのに、介護保険料と支援金が同時に乗ったことで、トータルではむしろ負担が増えている。

気づいたきっかけ――久美子さんとのやり取り

夕食の後片づけを終えた久美子さんが、家計簿アプリを開きながら「なんか今月、天引き多くない?」と声をかけてきたのは、8月の給与が振り込まれた翌日のことだった。

亮太さんは最初、聞き流しかけた。「保険料、下がったって言ってなかったっけ」。そう答えながらも、久美子さんがスマホの画面をこちらに向けてくるので、しぶしぶ給与明細のアプリを開いてみた。

並べて見ると、たしかにおかしい。健康保険料の欄は先月より少ない数字になっている。それなのに、控除の合計額は増えていた。「介護保険料」という見慣れない項目が、新たに1行追加されていたのだ。

「ああ……そうか、40歳になったからか」

亮太さんは、入社した頃に総務から配られた資料の片隅で見た記憶をたどりながら、ようやく合点がいった。久美子さんは「支援金とかいうのも、いつの間にか増えてたよね」と、5月あたりから続いていた小さな変化にも触れた。1つひとつは数百円、数千円の話でも、重なれば無視できない金額になる。そのことに、2人はこの夜、初めてまとまった形で気づいた。

【コラム】

介護保険料は、40歳になった人が自動的に負担することになる保険料で、本人が何か手続きをしなくても、誕生月を境に給与から天引きが始まる。多くの人にとって、40歳の誕生日は「介護」という言葉が生活に入り込んでくる最初の節目でもある。

一方の子ども・子育て支援金は、年齢や子どもの有無にかかわらず、協会けんぽ加入者全体で負担する新しい仕組みとして2026年度から始まった。健康保険料率の引き下げという「良いニュース」と、介護保険料・支援金という「新しい負担」が同じ時期に重なったことで、明細の変化に気づきにくくなっている面もある。

リアル家計簿(佐々木家・2026年8月)

  • 給与手取り(夫):270,000円
  • パート収入(妻):80,000円
  • 収入合計:350,000円
  • 家賃:135,000円
  • 水道・光熱費:18,000円
  • 通信費:9,000円
  • 食費:68,000円
  • 教育費(学童・習い事):26,000円
  • 生命保険等:12,000円
  • その他生活費:40,000円
  • つみたてNISA:15,000円
  • 支出合計:323,000円
  • 収支:+27,000円(介護保険料・支援金の増加分の約3,222円が、この黒字額から目減りしている)

リファレンス

※本連載はフィクションです。制作体制については編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました