しおり堂の処方箋

大器晩成「まだ、仕上がっている途中なだけです」

雨上がりの夜だった。会社帰りらしいスーツ姿の男が、傘の水滴を払いながら店に入ってきた。「何かお探しですか」と栞さんは声をかけた。男は棚を眺めながら、「いや、たまたま灯りが見えたので」と答えた。それから文庫本の背表紙を一列、指でなぞっていった...
2045年の仕事

AI時代 2045年の仕事内容「看護師」編──記録する手は消えても、支える手は消えない

※本連載は2026年時点の統計・公開情報にもとづく未来予測フィクションです。記事中の金額はすべて現在(2026年)の貨幣価値・物価水準に換算しています。仕事案内所の午後は、いつも人の出入りが少ない時間帯だ。窓際の観葉植物に西日が当たっている...
しおり堂の処方箋

推敲「完成は、まだ来なくていいのです」

雨が降り出したのは、駅から少し歩いたところだった。折りたたみ傘を持っていなかった彼女は、軒先を探して路地に入り、看板もろくに読まないまま、目についた店の扉を押した。古書店だった。紙とインクの匂いがした。「いらっしゃいませ」奥のカウンターから...
しおり堂の処方箋

鶏口牛後「その肩書き、あなたを守ってはくれません」

金曜の夜、駅前の飲み会を早めに切り上げた男が、傘も差さずに小走りで一軒の古書店に駆け込んできた。「濡れてしまいましたね」と栞さんは声をかけた。男はハンカチで肩を拭きながら、「すみません、雨宿りです」と少し照れたように言った。名刺入れの角がジ...
2045年の仕事

AI時代 2045年の仕事内容「警察官」編――巡回は消えても、駆けつける仕事は消えない

※本連載は2026年時点の統計・公開情報にもとづく未来予測フィクションです。記事中の金額はすべて現在(2026年)の貨幣価値・物価水準に換算しています。仕事案内所の窓口に、高橋美月(たかはし みづき・21歳)は少し早く着いた。予約時間まで、...
あなたの知らない官報

首相の「3時間滞在」が飛行禁止区域を生む――空にも及ぶ要人警護の新基準

ドローンの飛行禁止区域と聞くと、国会議事堂や首相官邸のように、あらかじめ決まった建物を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。2026年7月10日発行の官報には、滞在時間という「時間の長さ」を判断材料にして禁止区域が決まる新しいルールが掲...
転落家族

保険料率は下がったはずなのに――40歳の誕生月に始まった「介護保険料」で手取りが減った40代夫婦の家計

※本記事は公的統計データに基づき、現代の家計事情をリアルに再現したシミュレーション・ストーリーです。佐々木亮太さん(仮名・40歳)は、都内のIT企業に勤める会社員だ。妻の久美子さん(38歳)はパートで働き、小学6年の長女と小学3年の長男がい...
しおり堂の処方箋

守株「その切り株は、もう兎を呼びません」

雨上がりの夕方、一人の女が店に入ってきた。傘立てに置いた折り畳み傘から、まだ水が滴っていた。「濡れましたね」と栞さんは声をかけた。女は少し驚いた顔をしてから、「あ、はい」と小さく答えた。「駅からここまでで、また降られてしまって」「何かお探し...
2045年の仕事

AI時代 2045年の仕事内容「薬剤師」編――薬を数える手は消えても、人を見る目は消えない

※本連載は2026年時点の統計・公開情報にもとづく未来予測フィクションです。記事中の金額はすべて現在(2026年)の貨幣価値・物価水準に換算しています。駅前の雑居ビル、2階。「仕事案内所」の扉を開けたのは、制服姿の女子高校生と、その母親だっ...
2045年の仕事

AI時代 2045年の仕事内容「大工」編――図面はデータになっても、木を納める手は消えない

※本連載は2026年時点の統計・公開情報にもとづく未来予測フィクションです。記事中の金額はすべて現在(2026年)の貨幣価値・物価水準に換算しています。「大工になりたいって言ったら、母に反対されて」高校2年生の田中悠人は、うつむき気味にそう...