変動金利の基準金利0.35ポイント上昇 住宅ローン返済額が月6,224円増えた30代夫婦

住宅ローン基準金利0.35ポイント上昇 返済額は月6,224円増えた 転落家族

※本記事は公的統計データに基づき、現代の家計事情をリアルに再現したシミュレーション・ストーリーです。

2026年6月16日、日本銀行は政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げることを決定しました。これを受けて、住宅ローンの変動金利の土台となる各金融機関の基準金利も動き始めています。ただし、その動きが家計にいつ届くかは、借りている銀行によってまったく違います。ある銀行では5年間、返済額が変わりません。別の銀行では、金利が変わった次の返済から、そのまま金額に反映されます。埼玉県内に住む宮田家は、後者の銀行でローンを組んでいました。

「金利が低いから」で選んだ2022年の決断

宮田健太(38歳)は電子部品メーカーの法人営業、妻の美穂(36歳)はスーパーの惣菜コーナーで週4日働いています。長男は6歳で小学1年生、次男は3歳で保育園に通っています。

2022年6月、夫婦は45,000,000円の一戸建てを購入しました。ローンはSBI新生銀行の変動金利(半年型)を選びました。決め手は金利の低さです。固定金利の窓口で提示された数字と並べたとき、変動金利は一段と低く見えました。

「固定にしなくていいの?」

契約前、実家の母から聞かれたことを健太は覚えています。答えはいつも同じでした。

「今はまだ金利が上がる感じじゃないし、上がっても知れてるでしょ」

当初の毎月返済額は115,822円でした。固定金利を選んでいた場合より10,000円以上安く、その差額を教育資金の積立に回す計画を立てていました。契約書に印鑑を押した日、美穂は新しいキッチンの写真を何枚も撮っていました。

4月に届いた「基準金利改定」の知らせ

2026年4月、SBI新生銀行は住宅ローンの基準金利改定を発表しました。変動金利(半年型)の基準金利を、2026年5月1日から年1.950%から年2.300%へ、0.35ポイント引き上げるという内容です。同行は「金融政策変更後の金利市場の動向を踏まえて」と理由を説明しています。

健太がこの知らせをアプリの通知で見たのは、5月の連休明けでした。数字を見ても、最初は自分たちの返済とすぐには結びつきませんでした。

「基準金利が上がったからって、うちの返済がすぐ上がるわけじゃないよね」

美穂にそう話したとき、健太の頭にあったのは、メガバンクで住宅ローンを組んだ同僚から聞いた「5年間は返済額が変わらない仕組みがある」という話でした。自分たちの契約にも同じ仕組みがあるはずだと、なんとなく思い込んでいました。

調べ直して初めて気づきました。SBI新生銀行の住宅ローンは、いわゆる5年ルール・125%ルールを採用していません。公式サイトには次のように明記されています。

「毎月返済額およびボーナス返済額は、適用利率が変更される度に変更します(いわゆる、『5年ルール』は、当行の住宅ローンでは採用しておりません)」

返済額の変更幅に上限も設けられていません。金利が低いことと引き換えに、宮田家は「変わらない5年間」を持たない契約を結んでいたことになります。

何にも使っていないのに、返済額だけが増えた

宮田家が契約時に適用されていた金利は年0.450%でした。今回の基準金利改定を反映すると、7月の返済分から適用金利は年0.800%になります。借入から50か月が経過した時点の残高、約40,006,933円をもとに、残りの返済回数で計算し直した毎月返済額は122,046円でした。

増えた額は6,224円です。買い物を増やしたわけでも、教育費が上がったわけでもありません。契約した金利の土台が動いただけで、毎月の引き落とし額が変わりました。

「え、これずっと続くの?」

通帳の記帳画面を見ながら、美穂が声を上げました。健太は答えられませんでした。契約時に説明は受けていたはずですが、実際に金額が動いてみるまで、その重さを想像できていなかったからです。金利が低いことだけを見て契約書に印鑑を押した2022年、まさかこんな形で数字が動くとは考えていませんでした。

宮田家だけの話ではありません。三菱UFJ銀行も2026年6月16日、短期プライムレートを年2.125%から年2.375%へ、0.25ポイント引き上げると発表しました。適用は2026年8月3日からで、日本銀行の金融政策決定会合の結果と市場金利の上昇を理由に挙げています。金利が上がる局面そのものは、宮田家に限らず、変動金利で借りている家庭全体に及んでいます。違うのは、その上昇がいつ、どんな形で家計に届くかという点です。

リアル家計簿:宮田家(夫38歳・妻36歳・子2人)

収入

  • 夫の手取り(電子部品メーカー・法人営業)288,000円
  • 妻のパート収入(スーパー惣菜コーナー・週4日)55,000円
  • 児童手当(6歳・3歳の2人分)20,000円

収入合計 363,000円

固定費

  • 住宅ローン返済(変動金利0.800%・改定後)122,046円
  • 保育料(次男・認可保育園)24,000円
  • 学童保育料(長男)8,000円
  • 生命保険・学資保険13,500円
  • 通信費(スマホ2台・光回線)12,300円
  • NHK受信料1,225円

固定費小計 181,071円

変動費

  • 食費70,000円
  • 水道・電気・ガス24,000円
  • 日用品9,000円
  • 被服・美容8,000円
  • 交際費・娯楽12,000円
  • ガソリン代・駐車場代17,000円
  • 医療費(子どもの通院等)4,000円

変動費小計 144,000円

特別費(年間支出の月割り)

  • 固定資産税(年168,000円の月割り)14,000円
  • 自動車税・車検(年90,000円の月割り)7,500円
  • 火災保険・地震保険(年48,000円の月割り)4,000円
  • 帰省・冠婚葬祭(年60,000円の月割り)5,000円
  • 家電の買い替え(年24,000円の月割り)2,000円

特別費小計 32,500円

貯蓄

  • 教育資金積立10,000円

支出合計 367,571円

収支 −4,571円(ボーナスで補填)

基準金利が改定される前、宮田家の収支は1,653円の黒字でした。教育資金の積立を削らずに続けられる、ぎりぎりの黒字です。改定後の返済額でこの黒字は消え、4,571円の赤字に変わりました。差額の6,224円は、住宅ローンで増えた金額とそのまま一致します。

「積立、減らすしかないのかな」

美穂がつぶやくと、健太は家計簿アプリの画面を閉じました。

「低い金利で得した分を積立に回すつもりだったのにな」

「先送り」ではなく、いま増えている

変動金利には、いわゆる5年ルール・125%ルールを採用している銀行があります。みずほ銀行はその代表例で、公式サイトでは「変動金利かつ元利均等返済で借入中の場合、5年ルール・125%ルールに基づき、10月1日を基準とした5年間は返済額に変更はありません」と説明しています。金利が上がっても、返済額そのものは5年間据え置かれる仕組みです。

ただし、これは負担が消えるという意味ではありません。返済額が変わらない間も、返済額に占める利息の割合は増えていきます。SBI新生銀行自身、5年ルール・125%ルールについて「総返済額を減らす仕組みではない」とし、負担が将来へ先送りされる仕組みだと説明しています。金利の上昇が大きい場合には、利息が返済額を上回り、払いきれなかった分が未払利息として残ることもあります。同行は「毎月の返済額が急には増えないため、負担が表面化しにくい」ことへの注意も呼びかけています。

宮田家の契約には、この据え置き期間がありません。裏を返せば、未払利息が積み上がる心配をせずに済む契約でもあります。ただし、金利が動いた分は、先送りされずにその月から家計に出てきます。今回の6,224円は、その仕組みが最初に姿を見せた金額です。

日本銀行の金融政策決定会合では、2026年3月・4月の会合でも、政策金利を1.0%程度へ引き上げるべきだという意見を出した委員がいました。据え置きが続いた末に、6月の会合で1.0%への引き上げが決まっています。金利の水準はまだ動く余地があるという見方が、政策委員のなかにも残っていることになります。

次の基準金利改定がいつ、どれだけの幅で来るのか、宮田家にはまだわかりません。わかっているのは、そのときも据え置き期間なしに、そのまま返済額へ反映されるということだけです。

リファレンス

※本連載はフィクションです。制作体制については編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。

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