日本で売られている水稲用の農薬に、「ビーム」「ロイヤント」という名前のものがあります。ビームゾルは稲の穂をいもち病から守る殺菌剤で、農林水産省の登録番号は第17346号。ロイヤント乳剤は水田の除草剤で、登録番号は第24387号。どちらも日本の公式サイトに製品ページがあります。
この2つを日本で売っている会社の名前は、コルテバ・アグリサイエンス。S&P500に入っているアメリカの会社です。
何をしている会社か:種と農薬の両方を持つ
コルテバ(Corteva, Inc.、ティッカー:CTVA)は、作物の種子と農薬を扱う会社です。年次報告書(Form 10-K)では、事業を「種子」と「作物保護」の2つの部門に分けて報告しています。
2025年12月期の売上高は174億100万ドル。内訳は種子が98億9800万ドル、作物保護が75億300万ドルです。品目別では、トウモロコシの種子の売上高が70億200万ドルで、これ1品目で全社の約4割を占めます。製品が届く国はおよそ110カ国、従業員はおよそ2万1500人と説明されています。
会社そのものは新しく、2019年6月1日にダウ・デュポンから分離して独立し、ニューヨーク証券取引所に上場しました。ただし、その中身には長い前史があります。
代表商品:畑ではパイオニア 田んぼではビームとロイヤント
種子の主要ブランドの1つが「パイオニア(Pioneer)」です。年次報告書によると、北米のトウモロコシと大豆、欧州のトウモロコシとヒマワリ、ブラジル・インド・南アフリカ・アルゼンチンのトウモロコシなどが主な市場になっています。除草剤に耐えるように改良した大豆の形質「エンリストE3(Enlist E3)」については、2025年には自社ブランドの大豆のほぼすべてがこの形質を備えるようになった、と同社は説明しています。
一方、日本語サイトでは農薬の製品ページが掲載されています。冒頭に挙げたビームゾル(有効成分はトリシクラゾール、20.0%)とロイヤント乳剤のほか、殺虫剤のスピノエース顆粒水和剤、殺菌剤のゾーベックなどが載っています。種子の製品ページは、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。

強み:1926年からの育種と 農家に直接会う売り方
強みの1つは、種の改良を積み重ねてきた年月です。後で触れるように、種子事業の出発点は1926年にさかのぼります。研究開発費は2025年12月期で14億7400万ドル。売上高に対する比率は8%台です。種子と作物保護を含む新製品の研究開発に、この年度はこれだけを投じています。前の年度は14億200万ドル、その前は13億3700万ドルでした。
もう1つは売り方です。年次報告書は「パイオニア・エージェンシー・モデル」を同社に固有の仕組みとして挙げています。主に独立した販売担当者を通じて農家に直接売る形で、種まきの前から収穫までの間に農家と何度も接点を持ちます。こうしたやり取りから、顧客の次の注文を見通すための情報を得ている、という説明です。
日本との関係:永田町にある本社と 田んぼの薬
日本法人はコルテバ・アグリサイエンス日本株式会社です。本社は東京都千代田区永田町の山王パークタワー。同社の日本語サイトによると、これまで日本ではコルテバ・アグリサイエンス日本株式会社とコルテバ・ジャパン株式会社の2社に分かれていましたが、2025年7月1日に1社へ統合されました。
つまり日本では、いもち病用の殺菌剤や水田用の除草剤など、農業の現場で使われる製品を扱う会社として存在しています。
身近な接点は、もう1つあります。S&P500に連動するインデックス投信を積み立てているなら、その投信を通じて、この会社への投資を間接的に含んでいることになります。
アメリカ人にとっては:副大統領になった種苗会社の創業者
ここからが、この会社の意外な背景です。
コルテバが公式サイトの「コルテバの歴史」で自社の出発点の1つに挙げているのが、1926年にヘンリー・A・ウォレスが立ち上げたハイブレッド・コーン・カンパニーです。この会社は1935年にパイオニア・ハイブレッド・コーン・カンパニーへ社名を変え、1999年にデュポンの完全子会社になり、ダウとデュポンの合併と再分割を経て、いまのコルテバの種子事業になりました。
そのウォレスは、種苗会社の経営者にとどまりませんでした。アメリカ農務長官を務めたのち、1941年から1945年まで、フランクリン・ルーズベルト大統領のもとで第33代の副大統領を務めています(アメリカ上院の公式サイトによる)。
名前はいまも役所に残っています。メリーランド州にあるアメリカ農務省の大規模な研究拠点は、2000年6月6日に「ヘンリー・A・ウォレス・ベルツビル農業研究センター」と命名されました。命名の理由は、彼がこの研究所の拡張に力を尽くしたことだと、農務省の国立農学図書館は説明しています。
ウォレスはアメリカ政治史にも名を残す人物です。その同じ人物が、コルテバの種子事業のルーツにいます。
トリビア:16歳の畑と 金メダルのトウモロコシ
公式サイトの創業者紹介には、少年時代の話が載っています。16歳のウォレスは、見た目の美しさで賞を取ったトウモロコシと、見た目の劣るトウモロコシを並べて育てる比較試験を行いました。結果は、穂の見栄えと収量の間に相関はない、というものでした。品評会で選ばれた美しい穂がよく実るとは限らない。当時の常識に、高校生が畑で反論したことになります。
その後、ウォレスは1923年に高収量の交配種「カッパー・クロス」をつくります。公式サイトはこれを、1924年にアイオワ州のトウモロコシ品評会で金メダルを取った最初の交配種トウモロコシだと説明しています。1926年の創業から数えて、今年で100年です。
雑談で使える一言はこれです。のちにアメリカ副大統領になったウォレスのトウモロコシ研究が、いまのコルテバの種子事業につながっている。そのコルテバは、日本では田んぼの農薬も扱っている。
もう1つ、いま起きていることも書いておきます。コルテバは2025年10月1日に、会社を作物保護と種子の2つの独立した上場企業へ分ける計画を発表しました。種子事業を引き継ぐのは、子会社のバイラー(Vylor Inc.)です。2026年8月6日にアメリカ証券取引委員会へ提出された報告書によれば、同社は2026年7月30日の発表で、この分離が2026年10月1日ごろに完了する見込みだと説明しています。ただし条件が満たされることが前提で、取締役会には計画をやめる裁量も変える裁量もある、とも書かれています。
1802年のデュポン、1897年のダウ、1926年のパイオニアという3つの流れが1つになったのが2019年でした。その会社が、また2つに分かれようとしています。
これであなたは、500社のうち9社を知りました。
リファレンス
- Corteva, Inc. Form 10-K(2025年12月期)
- Corteva, Inc. Form 8-K(2026年8月6日提出)
- コルテバの歴史(コルテバ公式)
- 日本のコルテバについて(コルテバ公式)
- ビームゾル 製品ページ(コルテバ公式)
- ロイヤント乳剤 製品ページ(コルテバ公式)
- Vice Presidents of the United States(アメリカ上院)
- Henry A. Wallace Beltsville Agricultural Research Center History Collection(アメリカ農務省 国立農学図書館)
※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。


