これまでの経緯
- 2017年6月:天皇の退位等に関する皇室典範特例法が成立。付帯決議で「安定的な皇位継承を確保するための方策」の検討が政府に求められる
- 2021年12月:政府の有識者会議が「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ」「旧11宮家の男系男子を養子として皇族に迎える」という2つの方策を提言
- 2022年1月:政府がこの検討結果を衆参の正副議長に報告
- 2026年6月10日:衆参正副議長と与野党各党派による全体会議が、この2方策を柱とする「立法府の総意」を取りまとめ
- 2026年6月30日:政府が臨時閣議で「皇室典範等の一部を改正する法律案」を決定し、国会に提出(第221回国会 閣法第64号)
- 2026年7月1日:森衆議院議長が与野党に「静ひつな環境」での成立を要請。一方で、法案の一部内容が「立法府の総意」と食い違うとして、野党側から反発の声が上がる
この法案は何を目指しているのか
いまの皇室典範のままだと、皇位を継げる人(男系男子)も、皇族でいられる人も、将来的にどんどん少なくなっていきます。今回の改正案は、皇位継承の順番そのものを変えるものではなく、「皇族の数をどう確保するか」という別の問題に対応するためのものです。柱は大きく2つです。
- 女性皇族が結婚しても、皇族のままでいられるようにする
- 旧皇族(旧11宮家)の男系男子を、養子として皇族に迎えられるようにする
ここから先は、この2つの柱について、条文レベルで何がどう変わるのかを一つずつひらいていきます。
条文をひらく①:女性皇族は結婚しても皇族のままでいられる
いまの制度
現行の皇室典範第12条は、内親王・女王(女性皇族)が天皇・皇族以外の男性と結婚した場合、皇族の身分を離れると定めています。第13条には、その例外的な扱いに関する規定があります。
変わること
改正案は、この第12条と第13条をまるごと削除します。かわりに第10条を改正し、これまで「皇族男子」の婚姻にだけ必要だった皇室会議の議決を、「皇族」全体、つまり女性皇族の婚姻にも必要とする形に広げます。条文の該当部分を見ると、こう書かれています。
第十条中「皇族男子」を「皇族」に改め
つまりこういうこと
今までは「結婚=皇室を出る」という決まりでしたが、この第12条自体がなくなることで、女性皇族は結婚しても皇族のままでいられるようになります。ただし結婚するには、これまで男性皇族に必要だった皇室会議の議決という手続きが、女性皇族にも同じように必要になります。
経過措置について
この改正が施行される時点ですでに内親王・女王である人については、附則に例外規定が置かれています。本人が望めば、これまでどおり結婚と同時に皇族の身分を離れるという選択肢も残されています。つまり「今いる女性皇族」には、皇室に残るか離れるか、選ぶ余地があります。
論点になっている部分
女性皇族が結婚後も皇室に残った場合、その夫や生まれた子どもはどうなるのかという点は、「立法府の総意」の段階では明記されていませんでしたが、政府の説明では「夫や子は皇族にならない」とされています。この部分の扱いについて、野党側は総意で議論されていなかった内容だとして反発しています。
条文をひらく②:養子縁組で皇族を増やす、という新しい仕組み
いまの制度
現行の皇室典範第9条は、次のように定めています。
皇族は、養子をすることができない
皇室には養子という制度自体が存在しません。
変わること
改正案は、この第9条に例外規定を追加するとともに、皇室典範に「第六章 養子皇族男子」という章をまるごと新設します(新第38条)。条文が定める対象要件は次のとおりです。
- 養親になれる範囲:親王・親王妃・内親王・王・王妃・女王(皇嗣・皇嗣妃を除く)
- 養子の対象:旧皇族(旧11宮家)の男系男子の子孫で、現在皇族でない15歳以上の男性
- 条件:配偶者・子がいないこと
- 手続き:皇室会議の議決を経ること
つまりこういうこと
1947年に皇籍を離れた旧11宮家の男系の男性の子孫を、現在の皇室メンバーの養子として迎え入れることで、皇族の人数を増やそうという仕組みです。
条文をひらく③:養子になった人の「皇位継承資格」はどうなるのか
ここが、今回の法案でいちばん議論を呼んでいる部分です。条文(第38条)にはこう書かれています。
養子皇族男子(前項の規定により皇族となつた皇族男子をいう。)については、第二条の規定は、適用しない。
皇室典範第2条は皇位継承の順位を定めた条文です。つまり、養子になった本人には、この条文が適用されない=皇位継承資格を持たない、ということです。
一方で、養子皇族男子の子孫については、こう定められています。
養子皇族男子の子孫に係る第二条及び第六条の規定の適用については、実方の系統によるものとする。
「実方」とは、養子になる前の実家のことです。つまり、養子になった人自身は皇位を継ぐ立場にはならないけれど、その子ども・孫の世代からは、実家の血筋にもとづいて皇位継承の対象になり得る、という設計です。
論点になっている部分
この「養子の子孫に皇位継承資格を持たせる」という部分は、2021年の有識者会議や与野党協議の場では具体的に議論されていなかった内容だとして、一部の野党から「立法府の総意からの逸脱」という批判が出ています。政府・与党側は、この改正案が立法府の総意を踏まえたものだという立場を取っています。どちらの言い分が妥当かは、現時点では評価が分かれている状態です。
条文をひらく④:一度養子になったら、自分の意思では抜けられない
通常、成人した皇族は、本人の意思で皇族の身分を離れることができます(皇室典範第11条第1項)。しかし改正案は、養子皇族男子についてこの規定を適用しないと定めています。
養子皇族男子である王については、第十一条第一項の規定は、適用しない。
つまりこういうこと
一般の皇族とは違い、養子になった人は「自分の意思だけで皇族をやめる」という選択肢がありません。摂政に就く順序についても、養子皇族男子は内親王・女王の次の順位とする規定が置かれています。
条文をひらく⑤:この改正、ずっとこのままではない
法律案の附則第6条には、次のような見直し規定が置かれています。
この法律による改正後のそれぞれの法律の規定については、その施行の状況を踏まえて所要の検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。皇族の数の確保の状況等を勘案し、必要があると認められるときは、三十年ごとに見直しが行われるものとする。
つまりこういうこと
永久に固定するルールではなく、皇族数の確保状況を見ながら、将来また見直される可能性が制度上あらかじめ組み込まれている、というのがポイントです。
コラム:なぜ「養子」という方法が選ばれたのか
旧11宮家が皇籍を離れたのは、1947年(昭和22年)のことです。戦後の新しい皇室制度のもとで、当時の11の宮家が皇族の身分を離れ、一般の国民になりました。それから約80年、この旧宮家の男系の子孫を皇室に戻す方法として、これまでも「皇族としての身分を回復させる」案や「新しく宮家を作る」案など、いくつかの方向性が議論されてきました。
今回の改正案が選んだのは「養子縁組」という、民法上でも使われている仕組みを皇室典範に組み込む方法です。まったく新しい制度を作るのではなく、既存の家族法の考え方を応用することで、皇族という特別な身分と、養子という一般的な制度をつなげた形になっています。条文の中には「民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百九十八条の規定は、適用しない」という一文がありますが、これは通常の未成年養子縁組で必要な家庭裁判所の許可を、皇室会議の議決に置き換えるという意味です。一般的な養子制度をベースにしつつ、皇室特有の手続きに読み替えている、という条文の作りが見えてきます。
今後、どうなっていくのか
政府・与党は今の国会(第221回国会)での成立を目指しています。森衆議院議長は与野党7党の幹事長らに、静かな環境の中で法案を成立させることを最優先にするよう要請しました。一方で、法案の一部内容が与野党の「立法府の総意」と食い違っているとして、一部の野党が反発しており、審議の進み方は今のところ不透明な状況です。付帯決議案についても、衆参の正副議長が調整を進めています。
リファレンス
- 内閣官房「皇室典範等の一部を改正する法律案」骨子(PDF)
- 内閣官房「皇室典範等の一部を改正する法律案・理由」(PDF)
- 自由民主党「皇族数の確保は喫緊の課題 皇室典範等改正案を閣議決定」
- 参議院 議案情報「皇室典範等の一部を改正する法律案」(第221回国会 閣法第64号)
- 衆議院 議案情報 第221回国会 議案の一覧
※本記事はAIを活用して作成し、編集部が公的機関の発表などの一次情報にもとづいて事実確認を行っています。詳しくは編集方針・AI利用ポリシーをご覧ください。


