発電所を建てる計画のうち、国が「重要電源開発地点」として指定するものがあります。その指定を申請する事業者は、決められた事項を書いた申請書を経済産業大臣に出します。2026年8月14日、この記載事項を定めた国のルールが改められました。原子力発電所について書く型式からは、これまで並んでいた4つの型式の名前が消え、代わりに「革新軽水炉、小型軽水炉その他の次世代革新炉の別」という書き方が入りました。
変わったのは「重要電源開発地点」の申請書
改められたのは、経済産業省告示「重要電源開発地点の指定に関する規程」です。2005年(平成17年)の告示で、電源開発を行う者であって重要電源開発地点の指定を申請する事業者が、決められた事項を記載した「重要電源開発地点指定申請書」を経済産業大臣に提出し、要件に適合すると認められれば地点の指定を受ける、という手続きを定めています。この規程が定めているのは、あくまでこの指定を受けるための手続きです。
指定の期間は、指定を行った日から運転を開始した日までです。指定を受けた事業者が要件を満たさなくなった場合には、指定を解除することができるとも定められています。
今回の改正は、この規程のうち、申請書に何を書くか、どんな手続きを踏むか、どんな要件で指定するかを定めた部分に集中しています。
消えた4つの型式名、入った「次世代革新炉」
改正前の記載事項は、原子力発電所の型式についてこう定めていました。
三 原子力発電所にあっては、軽水減速軽水冷却沸騰水型、改良型軽水減速軽水冷却沸騰水型、軽水減速軽水冷却加圧水型及び改良型軽水減速軽水冷却加圧水型の別(後略)
4つの型式が具体的に並べられていて、申請者はこのどれかを選んで書く形でした。
改正後は、次のようになりました。
三 原子力発電所にあっては、革新軽水炉、小型軽水炉その他の次世代革新炉の別(後略)
型式を1つずつ列挙する形から、「その他の次世代革新炉」という受け皿を持つ書き方に変わったことになります。水力発電所の「ダム式及び水路式の別」、地熱発電所と火力発電所の「復水式、背圧式等の別」は、改正の前後で変わっていません。この号のうち、書き換えられたのは原子力の部分です。
政策文書で「次世代革新炉」として挙げられる5つ
今回の官報に載った改正部分には、次世代革新炉が何を指すのかの定義は書かれていません。
この言葉が使われている国の文書としては、資源エネルギー庁がまとめた「エネルギー基本計画の概要」(2025年(令和7年)2月)があります。ここでは、次世代革新炉として革新軽水炉・小型軽水炉・高速炉・高温ガス炉・フュージョンエネルギーの5つが挙げられ、これらの研究開発などを進めるとともに、サプライチェーンと人材の維持・強化に取り組むと書かれています。
同じ資料は、次世代革新炉の開発・設置について、地域の産業や雇用の維持・発展に寄与し地域の理解が得られるものに限り、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の発電所のサイト内での建て替えを対象として具体化を進める、としています。
地元との手続きの書きぶりも変わった
同じ改正で、地元とのやりとりに関する部分にも手が入りました。
申請書に書く事柄は、「地元の立地に関する状況及び申請する地点の所在地を管轄する市町村長の同意の状況」から、「市町村長への協議の状況」に変わりました。
一方で、指定の要件のほうには市町村長の同意が残っています。改正後の要件には「申請された地点の所在地を管轄する市町村長の地点の指定に係る同意が得られていること」という条件が引き続き置かれており、「同意」という言葉が「協議」に置き換わったわけではありません。
都道府県知事への意見照会も、「申請された地点に係る意見の照会」から「申請された地点の指定に係る意見の照会」へと、何についての意見なのかが書き加えられました。
公開ヒアリングについては、新しい1項が加わりました。
3 資源エネルギー庁長官は、第一項の申請(当該申請に係る電源が原子力である場合に限る。)があった場合には、重要電源開発地点の指定が行われる前に原子力発電所の立地に係る公開ヒアリングを開催しなければならない。
公開ヒアリングは、改正前から指定の要件に入っていました。改正前の要件は「原子力発電の立地に係る公開ヒアリング(第一次公開ヒアリング)が終了していること」で、括弧の中に「第一次」という限定がありました。改正後はこの括弧が外れ、上の第3項のヒアリングが終了していること、という書き方になっています。
要件の適用範囲もはっきりしました。改正後は、申請に係る電源が原子力以外である場合には公開ヒアリングの要件を除く、と本文に明記されています。
このほか、供給計画への記載を求める要件に「原則として」という言葉が加わりました。
改正の主なところを並べると、次のようになります。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 原子力の型式 | 4つの型式名を列挙 | 革新軽水炉、小型軽水炉その他の次世代革新炉の別 |
| 申請書に書く市町村長との関係 | 同意の状況 | 協議の状況(指定の要件には同意が残る) |
| 公開ヒアリング | 要件に「第一次公開ヒアリングが終了していること」 | 開催を定める第3項を新設。要件は第3項のヒアリングを指す |
施行はこの日から これまでの指定はそのまま
附則では、施行の時期と、すでに行われている指定の扱いが定められています。
1 この告示は公布の日から施行する。
公布は2026年8月14日ですから、この日から新しい書式が使われることになります。
2 この告示の施行の際現に効力を有するこの告示による改正前の重要電源開発地点の指定に関する規程第四条第五項の規定による指定は、この告示の施行後も、なお効力を有する。
すでに指定されている地点は、改正前の規定にもとづくものであっても、そのまま効力を持ち続けます。
申請書に書ける型式が広がったからといって、その型式の発電所がすぐ建つわけではありません。ただ、国が使う書類の側は、先に受け入れる形に整えられました。
【コラム】「軽水」「沸騰水型」「加圧水型」ということば
改正前の条文に並んでいた型式の名前は、ひらいて読むと構造がわかります。
「軽水」は、ふつうの水のことです。原子炉では、核分裂で飛び出す中性子の速度を落とす材料(減速材)と、熱を運び出す材料(冷却材)が必要になります。この両方に水を使うのが軽水炉です。重水(水素の代わりに重水素を含む水)を使う重水炉と区別するために、あえて「軽い水」と呼んでいます。改正前の条文に並んでいた4つの型式は、いずれも名前が「軽水減速軽水冷却」で始まっていました。
「沸騰水型」は、原子炉の中で直接お湯を沸かして蒸気を作り、その蒸気でタービンを回す方式です。英語の頭文字からBWRとも呼ばれます。「加圧水型」は、原子炉の中の水に高い圧力をかけて沸騰させないようにし、その熱を別の装置に運んで蒸気を作る方式で、こちらはPWRと呼ばれます。「改良型」は、それぞれの改良版という意味です。
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